ニワトリが道を渡ったわけ
ニワトリは、なぜ道を渡ったのか(Why did the chicken cross the road?)との命題に、古今東西の著名人達ならきっとこう答えるに違いないとの、機知に富んだ回答を集めたものがある時知人からメールで送られてきました。どれも、この人ならそんなことを言いそうなものばかりで、大いに笑えますが、その一方で、英語のジョークなのでそれぞれの人物のひととなりなど、欧米の事物に通じていないと、本当のおかしさが分らないものもあります。以下に、そのさわりをご披露しましょう。
まずは、公民権運動の指導者、キング牧師の場合:I envision a world where all chickens will be free to cross roads without having their motives called into question. (私は、どんなニワトリも動機を問われることなく、自由に道路の横断ができる社会の到来を夢見る。) 黒人が白人と全く同じ権利を享受できる社会の実現ために運動したことを踏まえています。
次は、アリストテレスです:It is the nature of chickens to cross the road.(ニワトリは、道を渡るもの。)真理を究める哲学者らしい言葉なのです。
「資本論」の著者マルクスは、こう言います:It was a historical inevitability.(歴史的必然である。)共産主義を歴史的帰結であるとしたことに引っ掛けた発言となっています。
イラクのフセイン大統領の場合は、どうでしょう:This was an unprovoked act of rebellion and we were quite justified in dropping 50 tons of nerve gas on it. (これは、意図的な反逆行為であり、これに我々が50トンの毒ガスを投下したのは、当然である。)
深層心理のフロイトの場合は、こうです:The fact that you are at all concerned that the chicken crossed the road reveals your underlying sexual insecurity.(ニワトリが道を渡ったことが気になるのは、そもそも心の奥に性的不安があるからだ。)
アインシュタインならこう言うかもしれません:Did the chicken really cross the road or did the road move beneath the chicken? (本当にニワトリが道を渡ったのか、それとも足元の道の方が動いたのか。) 相対性理論に立脚した発言なのです。
マイクロソフト社ビル・ゲーツの場合は、どうでしょう:I have just released eChicken 2000, which will not only cross roads, but will lay eggs, file your important documents, and balance your checkbook and Internet Explorer is an inextricable part of eChicken.(eチキン2000の発売を開始しましたが、これは、道を渡るばかりでなく、卵を産み、皆様の重要書類をファイルし、会計処理もします。インターネット・エクスプローラは、eチキンと一体不可分です。) ソフトの抱き合わせ販売で独占禁止法違反の訴えを受けたことを念頭に置いたものです。
不倫疑惑を起こしたクリントン元大統領なら、こう言いかねません:I did not cross the road with THAT chicken. What do you mean by "chicken"? Could you define "chicken" please? (あのニワトリと道を渡ったことはない。「ニワトリ」って何のことを指しているんだい?その定義を言って欲しい。)
記者会見が苦手とされているブッシュ前大統領の言葉です:I don't think I should have to answer that question. (その問いに答える必要は無いと思う。)
名も無いおじいちゃんの場合:In my day, we didn't ask why the chicken crossed the road. Someone told us that the chicken crossed the road, and that was good enough for us. (わしらの時代には、誰もニワトリが道を渡った訳など詮索せんじゃった。誰かがニワトリが道を渡ったと言えば、それだけで充分じゃった。)
極めつけは、ケンタッキーフライドチキンの創始者、サンダース大佐の発言とされるものです:I missed one? (一羽でも逃したかね。)
実は、ウェブサイトを検索してみて分ったのですが、”Why Did the Chicken Cross the Road?”(http://www.whydidthechickencrosstheroad.com/ )、という自称「公式」サイトがあり、そこには、コンピュータ関係、芸能人関係、歴史上の人物、宗教関係、政治関係、科学関係、テレビ関係、作家関係などのジャンル別に整理した上で、この手の発言が120以上も掲載されており、とても興味深いものです。また、楽しいゲームなどもあります。
甲斐 晶(エッセイスト)
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