政治

投票年齢

1191004595 今年2月、鳩山法務大臣が法制審議会に対して、成人年齢を18歳に引き下げるのか、それとも20歳のままにするのかについて諮問しました。

きっかけは、昨年5月に成立した憲法改正の手続きを定める国民投票法において投票年齢が18歳以上とされたことによります。同法の付則では、成人年齢について2010年の施行時までに、公職選挙法、民法その他の法令の検討を加え、「必要な法制上の措置を講ずる」と規定されています。これを受けて、政府は年齢条項の見直しに関する検討委員会を設置し、昨年11月に計191本の関連法を関係省庁が検討する方針を決めたところです。

Asahi何歳になれば社会的に一人前と見なせるのかは、大いに意見の分かれるところであり、そう簡単に結論を得ることはできそうにはありません。今回の諮問が一定の方向性を示さずに、異例の白紙で行われたことからも、審議の困難さが窺えます。法務省としては、法制審議会での検討と併行して世論調査などで広く国民の意見を聴くことも検討しているようです。

 新聞論調でも意見が分かれています。読売が世界主要国の動向から、積極的に成人年齢を18歳に引き下げるよう論陣を張っているのに対し、 朝日、日経は、成人年齢の変更は影響が大きいとして、慎重審議を主張しています。Nikkei

読売新聞によると、米英独仏などの欧米諸国を始め、ロシア、中国などの主要国も成年年齢は18歳以上であって、これが世界の大勢であり、国際標準でもあるとし、投票年齢を成年年齢とほぼ連動させて18歳以上とする国が約160か国にも及ぶと指摘しています。そして、国民投票法が投票年齢を「満18年以上」としていることに沿って関連法の整備を求めていることや、世界の大勢を見れば、成年年齢も投票年齢に合わせるのが、基本だろうとしています。

Yomiuri_2 このように、我が国では投票年齢を広く18歳とすることが大きな波紋を呼んでいるわけですが、実は、オーストリアでは投票年齢は既に十数年にわたって18歳とされていましたが、さらにこれが昨年7月、16歳に引き下げられたのです。すなわち、オーストリア政府は昨年5月2日、選挙権を18歳から16歳に引き下げる法案を閣議決定。その後国会の承認を経、昨年7月1日に施行されました。(オーストリアの投票年齢は、1949年に21歳から20歳に、1992年に20歳から19歳に引き下げられて来た経緯があります。At

これまでも、オーストリア及びドイツなどではすでに一部の地方選挙で16歳での投票が認められていましたが、全国レベルで16歳まで選挙権を拡大するのはEUでは初めてで、年齢引き下げを求める議論がある英国などにも影響を与えそうです。 この結果、早速、本年中に地方選挙で適用され、また、国政選挙では2010年に予定される総選挙から適用される見通しとなりました。この引き下げで現在は約610万人の有権者数が約20万人増えることになるそうです。

 なお、今回のオーストリアの法改正によって、被選挙権についても、大統領選(35歳)の場合を除いて、議員は現行の19歳から18歳に引き下げられ、国民議会(下院)議員の任期も4年から5年に延長されるとともに、在外居住者の郵便投票も導入されることになりました。Br

 欧米を始め主要国では選挙権が得られる年齢は18歳が主流で、 ブラジル、キューバ、Cuニカラグアなどが16歳となっています。このほか、投票年齢は、北朝鮮、スーダン、セイシェルが17歳となっているのに対し、台湾、ナウル、チュニジアが20歳、マレーシア、モルジブ、サモア、シンガポール、ソロモン諸島、トンガなどが21歳、Uz そしてウズベキスタンがなんと25歳となっています。

選挙権年齢や成年年齢の18歳への引き下げには、社会的に未熟だとして、疑問視する声があります。明治時代に民法で成人年齢を20歳としたのは、平均寿命や精神的成熟度からだとされます。寿命が大いに延び、パラサイト世代の出現で30歳になっても自立せずに親がかりの傾向にあります。何歳から一人前かを決めるのは至難の業です。

甲斐 晶(エッセイスト)

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