旅行・地域

欧州セキュリィ調査団の旅

 2024年9月下旬に、9日間の日程で、欧州における原子力発電所のセキュリティ対策の状況を調査するため、英国、オーストリア、ハンガリーに調査団として出かけて参りました。

 Heysham2_20241027211201 英国では、ランカスター近郊のヘイシャム2原子力発電所(左図)を訪れて、サイバーセキュリティ対策について調査するとともに、その核セキュリティ業務を請け負っている、EDF Nuclear Services社のグロスター本社を訪問し、核セキュリィティ対策の現状について調査しました。New_wins_logo2018large_20241027211201 さらにオーストリアの首都ウィーンにあるWINS(世界核セキュリティ協会:ロゴは左図)を訪問。各国の核セキュリティ対策の現状について調査するとともに、ハンガリーのパクシュ原子力発電所及び原子力規制機関HAEAを訪問して所要の調査を行いました。

 Paksnpp-atomerm_fbejrat_20241027211201 英国のヘイシャム2原子力発電所とハンガリーのパクシュ原子力発電所(左図)では、現場を視察する機会を得ました。現場視察では、思いがけず予定しなかった事物や出来事に遭遇することがあり、それらを我が国の原子力施設に適用して役立てることができるのはと思われることがあります。今回もいくつかそうした事例に遭遇しました。

 61yvjexv9l_ac_sx569_ 例えば、ヘイシャム2の現場視察では、核セキュリティ担当者が随行して原子炉施設内部を案内してくれましたが、立ち入り制限区域を通過した際のことです。この担当者がうっかりしていてスマートウォッチを区域外の所定の保管庫に置くのを忘れて入域していたため、壁に設置された探知器が反応してしまうということが起きました。これはこの探知器の有効性を示すものですが、内部脅威対策の機器として、電磁波を発生する機器の持ち込みを探知する機器に適当なものはないかと探していた電力会社所属の団員にとって有益な情報となったことと思います。

 また、同発電所の食堂を利用した際のことです。天井から、AからZのアルファベットの看板が吊り下げられているのを目撃しました。何のためのものか随行者に尋ねると、安全上の緊急事態が発生した際に、食堂が職員の1次避難の集合場所として利用されていて、職員は自分の姓の頭文字のアルファベットごとに該当する看板の下に整列することになっていて、これによって迅速に安否確認ができるようにしているとのことでした。こうした工夫はわが国でも参考になるのではと思われます。

 Manchesterap 今回の調査日程は、3泊したブダペスト以外、毎日が移動、移動の連続で、毎晩宿泊地が異なるというタイトな状況が続きました。このため、航空会社に預託した荷物を最初の到着地(マンチェスター)で受け取れなかった場合には、その荷物の転送先の指示に苦労することが危惧されたのですが、幸いにもそうした事態に至ることが無くて済んだのは、何よりでした(左図©Euro Travller)。

 ところが、ロンドンからのフライトが遅延したため、ウィーンの宿に着いた時には、すっかり真夜中を過ぎてしまいました。事前にそのことを知らされていなかったのですが、23:00以降はレセプションに全く人がいなくなり、玄関のインターフォンを押しても、何の反応もないのです。すっかり困っていると、やはり遅れて到着したハンガリー人の老婦人が助けてくれました。彼女の英語が流暢ではないので、お互いにカタコトのドイツ語で意思疎通。その結果、ホテルの電話を呼び出すと、担当者が電話口に出るので、自分の名前を告げます。すると、その個人専用のPIN番号を教えてくれるので、インターフォンの横にあるテンキーを使ってPIN番号を入力すると、割り当てられた部屋の鍵が見事に出てきました。やれやれ。

 Haea-oahlogoen_20241027211201 今回の調査にあたっては、実に色々な方々にお世話になりました。特に、親交のあるHAEA(ロゴは左図)の部長には、ショートノーティスでのHAEA及びパクシュ原子力発電所訪問の依頼であったにも関わらず、手厚い対応をして戴きました。さらに、訪問先の手がかりが全く無かった英国の原子力発電所の視察に関しては、本年1月下旬に東京で開催されたWINSのワークショップでご一緒したEDF Nuclear Services社の専門家の手配によって、円滑な訪問が可能になりました。この場をお借りして関係各位に謝意を表する次第です。

甲斐 晶(エッセイスト)

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CNS年次大会等を訪れて

Cnalogo2022 2023年6月上旬に、原子力発電所のセキュリティに関する調査のため、カナダと米国に出かけました。まず、カナダのセントジョン市で開催されたカナダ原子力学会(CNS)の年次大会に参加し、開会セッション等に出席するとともに、同市に所在、または同大会に参加していたセキュリティ関連のメーカーや原子力関連のエンジニアリング会社等との個別会合を行いました。さらに、米国ワシントンD.Cに移り、セキュリティ関連のNPO.を訪問して所要の調査を行いました。

Moltex CNSの年次大会では、カナダの原子力事業者の発表を通じ、次世代のSMR(中小型炉)の配備を中心にして、クリーンで安定したエネルギー源の活用により、カーボン排出ネットゼロの社会の実現を目指す意気込みを強く感じさせられました(図:カナダで配備が検討されているMoltex炉)。また、個別企業等の会合では、サイバーセキュリティ及び核セキュリティに係る先進技術に接することができ、所期の目的を果たすことができました。

Opening 開会セッション開始の冒頭、先住民の男女2名が、本大会の参加者及びその家族の健康と安寧を祈念する儀式を、先住民の歌や踊り、タバコの煙を鷲の羽で煽いだりする動作を交えて行っていました(左図)。こうした特別な行事を学会の開会冒頭に行っていることを目にしたり、開会セッションにおけるカナダの各州や事業者の発表の中で、その事業の推進において、先住民との共存を図るべく、事業への先住民の参画にいかに腐心しているかの言及を耳にしたりして、先住民との関係に特別な配慮を行わなければならないカナダ特有の事情、すなわち、原子力開発利用においても先住民の理解と協力や参画が必須と考えるカナダの原子力関係者の姿勢が窺えて印象的でした。

Img_5704 ところで、新型コロナが5類感染症に移行して間もないタイミングでの出張だったためか、日本からカナダへ向かう機内では、マスク姿の乗客が日本人以外にも見かけられ、我々の一行も皆マスク姿でした。しかしながら、CNSの年次大会では、レセプションにおいてもマスク姿の参加者は殆ど見かけなかったことから(380人ほどが参加登録した年次大会でマスク姿は、たった一人、白人男性がいただけでした)、我々も、若干の懸念を抱きつつも、郷に入りては郷に従えで、マスクなしで過ごすことになりました。

K10014093381_2306080927_0608093846_01_02 しかしながら、ワシントンD.C.着いてみると、道行く人々にマスク姿が多く見られ、アメリカ人のメンタリティはカナダ人と少し違うのかなどと感じましたが、実はこれは、カナダ東部で続く森林火災(右上図、出典:NHK)の煙が国境を越え米国に広がり深刻な大気汚染を引き起こしてImg_6028 いたためでした。このため、ワシントンD.C.でもひどいスモッグになり、公衆衛生当局がマスクをしないと肺などに健康上の影響を起こす可能性があるとの警告を出したためだと分かりました。左下の図は、自由時間にリンカーン記念館を訪れた際に、カナダの森林火災によるスモッグのために霞んで見えるワシントン記念碑を撮ったものです。森林火災によるスモッグの影響は深刻で、ワシントンDCよりもカナダに近いニューヨークでは飛行機の発着にも遅れがでたほどとの報道がなされていました。

Citylogo347110285_9451800418224260_50374 今回CNSの年次大会が開催されたセントジョンは人口約12万のニューブランズウィック州第2の都市で、ファンディ湾の北、セントジョン川の河口に位置しています。世界最大の干満差を見せるファンディ湾は、1日2回、大西洋の潮の満ち引きでセントジョン川を逆流して約1000億トンの海水が押し寄せることから、「Reversing Falls(逆流する滝)」が見られることで有名で、同市のウェブサイトには、Reversing Fallsを見物するため、その日の干潮・満潮の予報時刻の情報が掲載されているほどです(https://saintjohn.ca/en)。

Reversing-falls70 個人的には、約50年前、ミシガン大学に留学中の夏休みに、ノヴァスコシャへ州へのドライブの途上で、「逆流する滝」の見物にセントジョンを訪れて以来の再訪問でした。今回、宿泊したヒルトンホテルが河口に位置していたので、毎日のように「逆流する滝」を見られるはずでしたが、どうも名前負けしている印象だったのは、50年前と余り変わりませんでした。(左図:「逆流する滝」の様子。出典:Tripadvisor

Cosjlogoblack さて、カナダにはセントジョン(Saint John)と良く似た名前のセントジョンズ(St. John’s)という町があるので要注意です。後者は、カナダ東岸に浮かぶニューファンドランド島東端近くの人口約20万の港町で、ニューファンドランド州の州都です。北米最古のイギリス人入植地ともいわれ、また世界一霧の深い町としてギネス認定されています。そのロゴ(左図)はセントジョンズ湾の幅の狭い深い入り江の形状を象徴しています。

甲斐 晶 (エッセイスト)

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