ペット

メダカの学校

 我が家の水槽で8ヶ月ほど飼い続けたアフリカツメガエルが死に、その後水槽はこのカエルの餌として買ってきた緋メダカの天下になったことについては既に書きましたアフリカ・ツメガエル後日談

 Adojyou1 メダカだけではいかにも寂しいので、アルビノのドジョウを1匹買ってきたことがあります。普段は水底に横たわっていますが、息継ぎのために時折ゆらゆらと水面に昇って来ては、また水底に戻る姿が何ともユーモラス。しかし、仲間がいなくてはと、夏の暑い盛りに魚屋で柳川用に売られていたドジョウを1匹貰って水槽に入れました。

 当初は、仲間が来て嬉しいのか、しきりに2匹が絡み合うように遊んでいましたが、そのうちにアルビノの方に白い斑点の病気が発生。これがメダカに蔓延し、ついにはドジョウにまで感染してしまい、結局は全滅してしまいました。野生のドジョウは、川底の泥の中に住んでいますから、汚れていて病原菌のキャリアーだったのでしょう。

 Beta 次に求めたのがベタ。タイ原産のとても気性の荒い魚で、オス同士を一緒に入れると喧嘩してしまい、ヒレがぼろぼろになるまで徹底的に戦うことから、タイでは闘魚用に飼育されるとか。狭い容器でも構わず、水の汚れにも強く、餌も余り与えなくて済むとの宣伝文句に、マリンブルーのものを1匹買ってきました。お店では狭い容器の中で余り餌も与えられずに飼われていたのでしょうか。当初、色も悪く元気もなかったのが見る見る回復。輝く虹色の長い胸ビレや尾ビレを羽衣のようにたなびかせながら泳ぐ様は実に優雅で、見ていて飽きませんでした。

 緋メダカともちゃんと共存していたのですが、半年ほどすると、丈夫だとの触れ込みにも拘わらず餌を食べる元気がなくなり、結局は逝ってしまいました。いい加減にしたらとの家人からの非難の声にもめげず、また別のベタを購入。しかし、やはり半年もすると死んでしまいます。性懲りもなくこれを都合3回繰り返しましたが、今は、もう諦めてメダカ一筋。と行きたいところですが、浮気心なのでしょう。02ryukin1 実は尾ヒレの長い丸ころした金魚(琉金)を1匹、緋メダカと同居させております。 これまでのわずかな経験ながら悟ったことは、水槽の中は、一つの閉じた生態系、いわば小宇宙を形成していることです。その構成要素の微妙なバランスの上に成り立っており、これが崩れると破滅に至ります。例えば、呼吸により生ずる二酸化炭素やメダカが餌を食べ、その排泄物や食べ残しの餌が水中のバクテリアによって分解されて最終的に生ずる硝酸()は水質を酸性にします。しかし、水中の植物プランクトンや水草は日中、蛍光灯照明の光に助けられて光合成する際に水中の二酸化炭素などを分解・消費し、程良いpHに調整します。しかし、むやみに水替えをするとこれが崩れるのです。また、折角バランスが取れた小宇宙に、浮気心を出してペットショップから別の魚を移入すると、意外な病原菌が持ち込まれエイリアンよろしく既存の秩序を破壊してしまうのです。

 Himedaka 緋メダカが産卵し、これが無事に孵って可愛い稚魚が沢山生まれるととても嬉しいもの。苦労が報われます。私などはずぼらな方ですから、折角の卵をエサとして食べてしまう親メダカから隔離するために水槽内に設けた飼育器に入れても、すぐに忘れてしまい、2週間ほどしてから孵っているのにやっと気が付く程度です。しかし、世の中には研究熱心な人がいて、HPにデジタルカメラによる孵化までの日毎の観察記録を紹介しています

また、メダカ愛好家の会を紹介しているサイトもありますし、旧江ノ島水族館が指導した「メダカの飼い方」のダイジェスト版は、メダカの飼育環境、餌、病気の予防と治療法、繁殖など、およそメダカの飼育を志す人にとって必須の知識・情報を満載。字義どおり「メダカの

学校」です。

 さて、メダカをペットとして飼う場合の唯一の欠点は、散歩に連れ出せないことです。もっとも本人たちもそれを喜びはしないでしょうが・・・。

甲斐 晶(エッセイスト)

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アフリカ・ツメガエル後日談

 Tfrogkermit_2は虫類や両生類の中でカエルほど親しみ深いものはありません。現に、ある製薬会社のマスコットにまでなっていて、薬屋の店先に置かれた大きなカエルの人形を通りすがりの小学生が撫でて行くのを見かけたりします。これがヘビの人形だったりしたら、きっとこうはいかないことでしょう。

  さすがにヒキガエルはグロテスク過ぎて、人気は今一つですが、ひょうきんな顔つきのアマガエルの方は愛橋があって、子供番組、セサミストリートでもカーミット・ザ・フロッグが人気キャラクターになっています。

 世界中にカエルの愛好家が多いからでしょう、インターネット上にカエルのホームページ(http://netro.ajou.ac.kr/~lastfrog/frog/froggy.html )を作った研究者がいます。Frog カエル好きが昂じて付いたあだ名が“Froggy”とか。世界中の様々な種類のカエルの写真を始め、学術情報やカエルにまつわる話題、イラストなどを満載。指定の箇所をクリックすると、「ケロケロ」とカエルの鳴き声が聞こえてくるほどの懲りようです。ケロちゃんのお食事用に世界の昆虫食のレセピーまで用意されていて、愛蛙家(?)にとっては必見ものです。

 さて、わが家で飼い始めたアフリカ・ツメガエルの「ぶち」については前回(アフリカ・ツメガエル)ご紹介しましたが、今回はその後日談です。

 「ぶち」を飼い始めたのは残暑がまだ厳しかった8月下旬のこと。他に2匹が一緒だったのですが、アフリカ原産なのに暑さが苦手な性質のため、相次いで他界。「ぶち」1匹だけが生き残りました。餌の乾燥糸ミミズを良く食べ、みるみるうちに当初の4倍以上に大きくなって、筋骨隆々の体型に。のし泳ぎや「水中クンバカ」(何しろ息が長くて、10数分間も潜水したままなのです)を披露してくれ、見ていて飽きませんでした。Laevis2

 ところが飼い始めて3ヶ月後の11月頃から異変が始まりました。時折、手脚を真っ直ぐ伸ばした状態で痙攣を起こすのです。水槽の底で発作が起きると、脚が硬直したままですから、水面まで息継ぎに上がれません。そのまま窒息してしまうのではと見ていてハラバラ。冬場になり水温が低下したためではないかと判断し、熱帯魚用のヒーターを水槽に取り付けたところ、この発作は起こらなくなりました。

 次なる異変は、視力が落ちて失明したのではと思わされるような行動パターンです。給餌の度に水槽の端を筈で叩いていたところ、これが条件反射となって、箸で叩く と餌を求めて水面まで上がって来るようになりました。Img13557600しかし、水面に浮かんだ餌の乾燥糸ミミズが良く見えないのか、そのすぐそばでしきりに飛びつくのに、一向に口の中には収まりません。食べ終わるまでに随分体力を消耗するようになりました。

 しかも折角このように苦労しながら餌を食べても、今度はしばしばこれを吐くようになったのです。そうなると、口から白っぽい粘液の雲をたなびかせながら泳ぐ始末。粘液で包まれた餌を引き上げてみると、中は未消化のまま。拒食症の蛙なんて聞いたことがありません。

 どうもこれは不眠症が原因ではないかと思われるのです。都会の街路樹は夜でも昼間並みの照明のため不眠症の症状を呈していると言われています。わが家の「ぶち」の場合、体調を崩し始めた時期と息子が大学受験で猛スパートを掛け始めた時期とがほぼ一致します。受験生のこととて、夜と昼とを取り違えた生活。夜中でも煌々と明かりを点けた部屋に「ぶち」の水槽があったのです。

 Medakayoukihi 「ぶち」は次第に痩せ衰え、肌は艶を失い、あれほど逞しかった脚も見る影もなく、お腹は皺だらけ。刺激に対する反応も段々少なくなり、辛いのか、ただ水面に浮かぶばかり。ペットショップに相談すると、拒食症になると手遅れとの話。生き餌をやってみたらとのアドバイスで緋メダカを10匹水槽に放しました。2匹が瀕死状態で見つかり、4匹が行方不明。「ぶち」のお腹も久しぶりに膨らんでいたので、どうも食べたようです。

 しかし結局は「薬石効無く」半年後に他界。水槽は排メダカの天下となってしまいました。                         甲斐 晶(エッセイスト)

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アフリカ・ツメガエル

 子供の小さいときにはペットを飼ってくれと子供からせがまれても、世話が焼けるからだめと拒んでいたのに、子供が大きくなって逆に手がかからなくなると、かえってペットにのめり込む人が多いようです。我が家でもご他聞に漏れず、ある時の夏からアフリカ・ツメガエルを飼い始めました。Afurikatumegaeruarubino

 このカエルはとても変わっています。アフリカ産で、後ろ足の水掻きのある指先に黒いトゲのようなツメが付いていることからこの名がありますが、両棲類のクセに陸上に出ることはなく、専ら水中に生息します。しかし成体は肺呼吸ですから、いつもは水槽の底にじっと潜んで居ても、10分置きぐらいに息継ぎのためりこ水面にちょこんと鼻先を出しては、すぐにまた水底に潜ってしまいます。

 息子が高校生時代にクラスでこれを飼っていたことからその存在を知り、夏のまだ暑い盛りのこと、ペット・ショップで元気の良さそうな体長5cmばかりの小さいものを3匹買い求め、中型の水槽で飼い始めました。

 3匹のうちの1匹はいわゆるアルビーノで、目が真っ赤なほかは全身が薄いピンク色。他の1匹は体色がオーソドックスな黒い縞模様であるのに対して、残りは黒のまだら模様。初めはプッチーニの歌劇「トーウランドット」に出てくる中国の宮廷の3人の大臣の名前にちなんで、ピン、ポン、パンと名付けたのですが、これではどれがどれやら区別が付きません。そこでそれぞれの体の特徴から白、黒、ぶちと命名しました。

 542948_l2ところがアフリカ産に似合わず、高温が大の苦手。その年の夏の記録的な猛暑で水槽の水温が30℃以上に上昇したためでしょうか。アイス・ノンで懸命に水温を下げたのにもかかわらず、白と黒が相次いで他界。「ぶち」だけが生き残って、そう大きくもない水槽を我が物顔に睥睨していました。

 体長は手足を含めて20cmほど。脚はたくましく太くなり、体型も背中がこんもり盛り上がって、横から見ると見事な流線型で泳ぐのに相応しい格好となり、立派に成長しました。

 ところがその手(前足)たるや、立派な脚(後足)に比べると極めて小さくて細く、ほんのお印し程度のもの。そのせいかどうかは分かりませんが、アフリカ・ツメガエルの泳ぎ方は、全くカエルらしくないのです。

 平泳ぎのことを「カエル泳ぎ」とも言うように、カエルの泳ぎ方は本来、平泳ぎのはずです。しかし、ぶちの泳ぎ方を観察していて気がついたのは、確かに脚は「蛙脚」で泳いでいるのですが、手の方は「蛙掻き」(ブレスト・ストローク)ではなくて、「のし泳ぎ」のスタイルな。のです。どうですか。のし泳ぎの蛙なんて何とも珍妙でしょう?この珍妙な泳ぎ方といい、魚のようにいつも水中にいる点といい、アフリカ・ツメガエルは実にカエルらしくないカエルなのです。

 4971618331021 エサは乾燥した糸ミミズで、サイコロ状になったものを一口大に千切って与えます。乾燥ミミズが水を吸ってふやけてくると、あたかも相手が生きものであるかのように、水中からこのエサめがけて勢い良く飛び付いて一気に頬張るのですが、この時ばかりは野生を感じさせられます。イヌやネコのような高等な動物ではないので、飼い主に懐くということはありませんが、エサをやる度に水槽を箸で叩いていたら、これが条件反射となって、水槽を箸で叩くとエサを求めて激しく水面に鼻先を出すようになりました。かわいいものです。

 給餌の時以外は水中でじっとしており、ほとんど動きません。ユーモラスに大の字になったまま水中浮遊していることがあり、ひょっとして死んでしまったのではないかと慌てさせられることもあります。

 アフリカ・ツメガエルを観察していて疑問に思うのは、前にも述べたようにほぼ10分に1度は呼吸のために水面に出てこなければいけないわけで一体何時眠るのだろうかということです。回遊魚などについての最近の研究結果によれば、これらの魚の睡眠は常にうとうと状態か、脳の半分ずつが交代で睡眠状態にあるそうですから、アフリカ・ツメガエルも案外そうなのかもしれません。

甲斐 晶(エッセイスト)

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