« 天上の響き、グラスハープ | トップページ

EXPO 2025 オーストリア館

__20250529220701 大阪・関西万博(EXPO 2025)が2025413日から1013日までの日程で大阪市の「夢洲」で幕を開けました。158の国と地域が参加しており、オーストリアも後述するようなユニークな形のパビリオン(オーストリア館)を建設して参加しています。

 修好156年を迎える日墺関係において、万博は特別な役割を果たしてきました。1873年のウィーン万博の際には、明治政府は文明国たる日本を世界にアピールする絶好の機会と捉えて、初めて自らのパビリオンを建設して参加。その結果、西洋にとってとてもユニークな文化であるジャポニズムが全ヨーロッパ、さらには世界へと大きく広がり、西洋の芸術・文化に多大な影響を及ぼしました。

 一方、オーストリアは、日本で初開催の大阪万博(1970年)は勿論、自然と共存する21世紀社会の創造を目指した愛知万博(2005年)にも、自らのパビリオンを建設して参加し、オーストリアの文化・芸術を幅広く紹介する場としました。

 Alexander_van_der_bellen_13072021_croppe 今回のEXPO 2025では、523日のオーストリアの日(ナショナル・デー)に行われたオーストリア館での式典に参加するため、アレクサンダー・ファン・デア・ベレン墺大統領が来日。これを記念して、日墺二国間の経済フォーラムが521日、目黒の雅叙園において開催され、同大統領も基調講演を行いました。

 このフォーラムでは、多くの演者から、①150年を超える両国関係を通じて、相互に相手国に対する敬意が醸成されており、②両国は、自由、人権、平和、安定、発展、開放、イノベーション、国際感覚などを重んじるlike-minded countries(志を同じくする国同士)であり、③すでにオーストリアから日本には約80社、日本からオーストリアには約100社が投資しており、④オーストリアはEUに展開する上での門戸、また日本はアジアへ展開する上での門戸であることなどが指摘されました。

 Takedaaheadaustria715x328 オーストリアと言えば、ともすればその文化・芸術だけをイメージしがちですが、実は官民を挙げてイノベーションに力を注いでおり、これに着目した武田製薬が、オーストリアの研究開発力と連携するため、20239月にウィーン郊外にバイオ関係の研究所(左上写真参照)を設立していることも紹介されました。

 先に述べたように、本年523日のオーストリアの日には、オーストリア館においてファン・デア・ベレン墺大統領の臨席のもと、ウィーン少年合唱団が両国歌を歌いました。またオーストリア観光大使のHYDE氏も大統領と交流。翌24日には大統領が兵庫県の姫路城を訪れ、同城とシェーンブルン宮殿の「姉妹城」締結式が行われました。(ちなみに大阪城は、「豊臣期大坂図屏風」(リンク先のServus!の記事を参照)が縁で2009年にグラーツのエッゲンベルク城と「友好城郭」提携を結んでいます。)

 Photo_20250529220001 さて、オーストリア館は、大阪・関西万博のシンボルである大屋根リングを時計回りに15分ほど歩いた位置にあり、木製の帯である五線譜がらせん状にぐるぐると17メートルの高さまで空に伸びて行くという、ユニークな外観で一段と人々の目を引きます(五線譜には、ベートーベンの「歓喜の歌」の一節が記されています)。同館は、万博の総合テーマ、「いのち輝く未来社会のデザイン」にちなんで「未来を一緒に作曲」するとのコンセプトで、入館者を両国関係に関する旅へと視覚的、音楽的、情緒的に誘って呉れます。

 Bsendorfer-grand-piano-under-lobmeyer 館の内部は3部構成になっています。まず、「両国関係」がテーマの第1の部屋に入ると、1869年に皇帝フランツ・ヨーゼフ1世から明治天皇に友好の印として送られたベーゼンドルフ社製グランドピアノにちなんで制作された、自動演奏機能を有するグランドピアノがあり、ロブマイヤー社製のシャンデリアの光に包まれています。その反響版にはあの有名な北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」の版画が描か38817_expoaustrianpavilionboesendorferkl れており、このモデルは世界に16台しか存在しないとのことです。この部屋では、1869年から今日に至るまでの両国関係の歴史における主な出来事が鮮明な動画でスクリーン上に映し出されています。

 やや狭い回廊となった第2の部屋は「人々」がテーマで、オーストリアの著名人が紹介されるとともに、現代オーストリアの様々な科学技術・現代文化がデジタル技術で紹介されます。

 これに続く第3の部屋では、オーストリア館のテーマ「未来を一緒に作曲」を入館者が実体験します。複数のスクリーンで、多数の入館者が同時に異なるSDGsを選択すると、その組み合わせに応じて独自の曲が作曲され、バーチャル・オーケストラによって演奏される仕組みです。

 パビリオン内部の見学を終えた入館者は、らせん状の帯に設けられた階段を登って屋上階に出ると、サウンド・オブ・オーストリアという音響装置があって、これに触れると、教会の鐘の音、ラデツキー行進曲、牧場の牛の鳴き声などを聞くことが出来、オーストリアのランド・スケープならぬサウンド・スケープを味わうことが出来ます。また、屋上からは、EXPO会場の素晴らしいパノラマ景観を眺めることが出来ます。

 Menyu-image17453119442871024x707 パノラマの展望を楽しんだ後は、カフェでオーストリアのグルメを楽しんで見ては如何ですか?定番のヴィーナー・シュニッツェル(左の画像をクリックして拡大して現れるメニューのNo.6)からグーラーシュ(同No.5)、そしてデザートのカイザーシュマーレン(同No.7)、アプフェルシュトゥルーデル(同No.8)、ザッハトルテ(同No.9)、リンツァーシュニッテ(同No.10)に至るまで何でも揃っています。そして、お食事の後には、本場のウィンナー・コーヒー(クライナー・ブラウナーまたはグローサー・ブラウナー、それぞれNo,11、No.12)を是非どうぞ。

甲斐晶 (エッセイスト)

|

« 天上の響き、グラスハープ | トップページ

文化・芸術」カテゴリの記事

オーストリア」カテゴリの記事

」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 天上の響き、グラスハープ | トップページ