日本のパスポートの秘密
前回の記事「世界の魅力的なパスポート」において、世界の多くの国のパスポートでそのビザのページがブラックライトで幻想的に浮かび上がる素敵な隠し絵が印刷されていることを紹介しました。日本のパスポートではどうなっているのか知りたくて、早速、ブラックライトをネットで購入しました。
送料込みで200円台の中国製の安価なものが多数Amazonで売りに出されていました。しかし、コメント欄を見ると、①安かろう、悪かろうで、結局、粗製濫造品を掴まされ、すぐ壊れてしまった、②中国から送られて来るので商品が着くまでえらく長く待たされたなどの書き込みが多かったので、これは少々高くても日本製をと考えました。色々、ネット検索した結果、日亜化学工業社製のUV-LEDを搭載したPW-UV343H-03Lという商品を選びました。税込み・送料込みで1,880円しましたが、注文してわずか2日で無事配達されてきました。
早速、今回発給された2020年パスポートの前に使っていた旧パスポートを確かめてみました。身分証明のページは、写真が薄いフィルムでコーティングされており、ページを上下に傾けるとページの中央から右の部分に富士山と小さな桜の花びらのホログラムが現れます。この桜の花びらは角度によって雪の結晶に変わるのが芸の細かいところです。写真の部分のホログラムは、複数の波線が写真を覆うように現れるとともに、丸に山桜の家紋や大小多数の桜の花びらが現れます。別の意匠の家紋も現れ、これら二つの家紋が角度によって全く別の家紋に変化するのですが、デザインが細かすぎて、私の目では何の家紋かを判別するのは困難です。またビザの各ページには大きな桜の透かしが漉き込まれています。
まず、身分証明のページにブラックライトを当ててみました。すると、ICチップに記録されている顔写真がページの右側にモノクロで楕円形の縁取りの中に現れるとともに、楕円の縁取りの上部と下部にはそれぞれパスポート番号と生年月日が極めて小さいフォントで表示されます。また、楕円の縁取りの左側と右側の部分に、それぞれ姓と名がアルファベット表記で現れます。さらに、顔写真のすぐ右横には、二重丸の枠内に日本国外務省の文字が英文で表記され、その中央に政府の紋章である五七の桐が浮かび上がります。顔写真のページと見開きになっているページ(p3:右の写真の上部)には、三本の横線が現れます。これがp5、p7ではそれぞれ二本、一本に変わります。
他のビザのページでは、ブラックライトで照らすと、大きめの桜の花びらが沢山散らばっているのが現れます。これは、上で紹介して来たような蛍光色のものではなく、また自然光の下では隠れていて識別できないので、特殊技術による偽造防止策のようです。
次に、2020年パスポートも調べてみました。身分証明のページのホログラムがさらに高度化し、ページを上下に傾けると、色々なホログラムの文様が動き出し、別の文様に変化するように見えます。例えば、桜の花びらが小さくすぼまって行って、別の小さな桜の花びらになったり、六弁の花形が小さくなって行って五七の桐の紋章とJAPANのロゴが現れたりします。また、ページの右下にある六弁の雲形の場合はくるくる回り始めたと思うと「日本国」のロゴが現れます。
ビザのページに大きな桜の花びらの透かしが漉き込まれているところは変わっていません。さらに、身分証明のページにブラックライトを当てて現れる変化も上に述べた旧パスポートの特徴と全く同じです。また、身分証明のページの見開きで対になっているページには、三本の横線と大小様々な大きさの正方形や複数の桜の花びらの形が現れます。ただ、三本の横線は蛍光発色ですが、そうでないその他の文様は旧パスポートのビザのページに現れる桜の花びらのように特殊技術によって生ずるもののようです。これらの文様は残りのビザのページにも施されていてブラックライトでくっきり現れます。
この他、パスポートの最終の見開きページ(左の写真参照)には、旧パスポートにも同様に採用されていた特殊印刷技術による偽造防止対策が採用されています。これはお札の偽造防止技術を応用したもので、左側のページの中央にインクの盛り上がった部分(精密凹版印刷)があります。ページを傾けてこの部分を左側から眺めると、大きな桜の花びらとその下にJAPANの文字が現れます。同様に右側のページの下に、一万円札の表の透かしの左下にあるような雲形の模様が見られますが、ページを傾けてこれを下から見るとJPNの文字が現れます。
この他にも、マイクロ文字など偽造防止のための高度精密印刷技術が駆使されているようですが、私には確認できませんでした。政府も手の内を全て明かすことになるので、どんな技術が使われているかは公表されていません。
このように、我が国のパスポートには、様々な偽造防止の技術がふんだんに盛り込まれています。皆さんも一度実物で確かめて見ては如何でしょうか?もっとも、上記の全ての特徴を確認するにはブラックライトが不可欠になりますが・・・。
一家に一台ブラックライトがあれば、お札やクレジットカードの真贋判定も簡単にできますし、有害な蛍光剤、蛍光染料等の蛍光反応を確認したり、紫外線硬化樹脂やジェルネイル等の硬化、夜光(蓄光)ルアーの短時間での蓄光などに大いに役立ちます。(しかしながら、どう見ても特殊な用途で汎用では無いですね。)
甲斐 晶(エッセイスト)
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