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ウィーンのドイツ語

 ドイツ語は、ドイツやオーストリアの国語であるばかりでなく、スイス、リヒテンシュタイン及びルクセンブルグにおいて公用語として用いられています。しかしながら、それぞれの地域で独自の発展を遂げて来ていることから、微妙な相違が見られます。Shaw_5

  「英国と米国は共通の言語で隔てられた二つの国である。」とは、劇作家バーナード・ショーの有名な言葉です。英語と米語ほどの相違は無いにしても、ドイツのドイツ語とウィーン(オーストリア)のドイツ語では、用語や発音などが大きく異なる点があり、これを知らずにいて戸惑うことも多々あります。(画像:http://manierafiorista.blog67.fc2.com/blog-entry-132.html

 

 Fisolen_imagelarge_3 ある時、ウィーンから車でミュンヘンを訪れた際の出来事です。物の本によれば「標準語」のドイツ語は、Hochdeutschと呼ばれるドイツ中・南部地方の言葉であって、ミュンヘンのあるバイエルン地方やオーストリアのドイツ語は同じ「バイエルン・オーストリア方言」に属するとされています。 そこで、八百屋でインゲン豆を買おうとして、いつもウィーンで使っている「Fisolen」を下さいと言うのですが、お店の人は、ぽかんとしています。後で分かったのですが、正統的なドイツ語では「grüne Bohnen」と言うのです。通じなかった訳です。(画像:http://www.bio-austria.at/layout/set/popup/media/images/fisolen

 ことほど左様に、食べ物関係の用語の多くがウィーンのドイツ語と標準ドイツ語では全く違った単語を用います。例えばErdapfel(ジャガイモ)はKartoffelのことですし、Karfiol(カリフラワー)はBlumenkohlMarille(あんず)はAprikoseParadeiser(トマト)はTomatenと言った具合です。

 Rimg0029_3 新酒のワインを飲ませる居酒屋のことをウィーンではHeurigerと言います。これは、「今年」を意味する副詞「heuer」(dieses Jahr)から派生した言葉で、標準ドイツ語なら「Buschenschank」と言うところでしょう。(ちなみに、新ジャガのことも「Heurige」(diesjährige Kartoffel)と言います。)この居酒屋での用語にも、ウィーン独特の表現が見られます。ウィーンも一応、几帳面とされるドイツ文化圏に属するところから、Heurigerのワイングラスの口元には、必ず横方向に白線の目盛りが入っていて、ちゃんと8分の1リットル(125cc)の分量があることの目安となっています。そこで、ワインを注文する際、本来はAchtelliter8分の1リットルと言うべきところを、ウィーンの居酒屋ではAchterlと言わなければなりません。4分の1リットルのジョッキなら、Vierterlとなります。(画像:http://motoobeyond.blogspot.co.at/2010/05/blog-post_07.html

また、ウィーン独特の風習として新酒のワインを炭酸水で割って飲みますが、これを「gespritzt」と称します。標準ドイツ語には無い表現で、ちゃんと言おうとすると「Wein mit Mineralwasser」とでもなりましょうか。りんごジュースなども炭酸割とするのが普通で、甘味が控えめとなり炭酸のピリピリ感もあって、個人的には大好きです。この場合には、「Apfelsaft gespritztと言って注文します。

日常の挨拶では、「Guten MorgenGuten TagGuten Abend」と時間によって使い分けるところを、「Grüß Gott」ひとつで済ませてしまいます。一方、別れ際には正統的な「Auf Wiedersehen」の代わりに、「Servus」と言ったりします。これは、出会った際の挨拶でもあります。

発音においても相違が見られます。例えば、あなた(Sie)は本来ならジィー(有声音)ですが、オーストリアでは、無声音のシィーとなります。従って6(sechs)を英語のsexと同じように発音するので、初めはちょっと戸惑います。他の有声音(b/d/g/w)もウィーンでは無声音(p/t/k/v)のように聞こえます。

Imagescalwfdzj_4 また、オーストリアのドイツ語は独特の抑揚があり、歯切れの良い標準ドイツ語に対して、どことなく関西弁や物憂げな米国の南部なまり(元米国大統領のカーター及びクリントン両氏の英語が典型)のように感じます。試しにオーストリア国営放送(ORFhttp://radio.orf.at/)を生で聴いてみて下さい。(画像:http://bar.wikipedia.org/wiki/Datei:ORF_logo.svg

甲斐 晶(エッセイスト)

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