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第三の男

第二次世界大戦後のウィーンを舞台にした映画、「第三の男」は、私にとって単にウィーンが好きだからと言う以上に特別な意味のある作品です。

Greene40年前に英国留学をした際に同じ奨学金制度で一緒だった友人が、この映画の原作者G・グリーンを研究していて、私の留学先がロンドンの南にある海岸の町ブライトンであることを言うと、彼の作品に「ブライトン・ロック」があるので良く知っているとのことでした。一体どんな作品だろうかと思って、それが収められた彼の全集を読んだことがありましたが、そこには、「第三の男」も入っていたのです。Bpbookcoverimage

廃墟となったウィーンに、親友ハリー・ライムを訪ねてきたアメリカ人作家ホリー・マーチンは、いきなりハリーの葬列に遭遇します。アパートの前で車にひかれたとの話にホリーは釈然とせず、ハリーの愛人アンナやアパートの管理人などに彼のことを聞き回りますが、謎は深まるばかり。そんな彼に英国占領軍の少佐キャラウェーは、ハリーが病院かPdvd_1066 ら横流ししたペニシリンを水で薄めたものを闇取引し、莫大な利益を上げており、このために多数の犠牲者が出ていると告げます。アンナのアパートからの帰路、ホリーは闇の中に浮かび上がるハリーの姿を目撃。彼は生きていたのです。結局、彼らは、プラター公園の観覧車の中で再会しますが、Pdvd_1077_2 自首を勧めるホリーをハリーは拒否。ホリーは、ハリーの逮捕への協力を決意し、彼をおびき寄せることに成功します。Pdvd_0366 罠だと気付いたハリーは、地下下水道へ逃げ込みますが、逃げ切れず、ホリーに自分を撃つように合図。ついに彼に撃たれます。中央墓地での葬式が終わり、アンナが墓地の並木道を無表情で立ち去るのです。

Dritmanさて、映画「第三の男」にゆかりの地を徒歩で辿る観光ツアーに参加したことがあります。「懐中電灯を持参し、汚れても良い服装で、滑りにくい靴を履いてくるように。」との指示が事前になされます。参加者は、まず、指定の場所に集合後、まず、ドナウ運河沿いの地下鉄駅に向かいます。駅の脇を流れるドナウ運河への階段を下りると、あの有名な地下下水道の一部が運河に流れ込んでおり、これを見学することが出来ます。照明もなく、足下も危ないので、前出のような注意書きとなる次第です。Amhof

次いで、冒頭の葬列の場面であるパラビチーニ宮殿(ハリーの住居)、ホリーに見つかったハリーが忽然と姿を消した広告塔(内部が地下下水道に通ずる螺旋階段となっている)の場面のアム・ホフ(アンナのアパート前との想定)、そして、アンナのアパートの場面となった、シューベルトゆかりの「3人姉妹の館」などを歩いて回ります。その間に、ガイドが次のような映画撮影にまつわる逸話を紹介するのです。3manncover2

        ハリー役のオーソンウェルズは潔癖性で、汚水の流れる下水道やネズミが大嫌い。毎日オーデコロンをたっぷり使っていた。

        ホリーがハリーを待ち伏せる場面で風船売りと愛らしい子供が現れて、緊張感を一瞬和らげますが、この子役は全くの素人で、お菓子を上げるからと釣って出演させた。

        現地ロケは限定的で、ほとんどの場面がロンドンでのセットで撮影された。ハリーがホリーに撃たれ、地上に逃げようとして、格子状の鉄枠の蓋を掴み、彼の指が鉄枠の先に突き出Halbig るシーンがあるが、本物の鉄枠は厚すぎて、掴んでもとても指は出ない。

        ホリーが待ち合わせの場としたカフェー・モーツアルトは、爆撃で破壊していたので、カプチーナ教会の広場にセットを作った。

映画に登場する立派な地下下水道は、実際にはカール広場の下にあります。映画ではウィーン市内の地下を下水道が四通八達している印象を与えていますが、実は同じ場所を何度も違った角度から撮っているのです。私もウィーン市の施設開放日に整理券を入手し、実際にこの目でその様子を確認したことがあります。

甲斐 晶(エッセイスト)

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