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ハルデン・プロジェクト

 04_a_halden060130162_27888d 2002年の秋に、北欧ノルウェーのハルデンにあるOECD/ HRP(ハルデン炉計画)を訪問する機会を得ました。今日の我が国の原子力研究・開発の指導者達の多くがその若い日にハルデン炉施設(HBWR)に派遣され、ここにおいて研鑚を重ねて得られた知見がその後の我が国の原子力開発利用に活かされて来たことをしばしば耳にしていたことから、前々から機会があれば是非一度尋ねてみたいと望んでいただけに、ようやく念願が叶った次第です。

 Haldensijaintikartta ハルデンは、ノルウェーの首都オスロから南西約100kmに位置しており、スウェーデン国境に近く、オスロフィヨルドに面した、古い歴史を有する小さな町で大変風光明媚な場所です。この地は、歴史的にデンマーク王の領地であったことから、町の外れの小高い丘には、デンマーク王フレデリックの中世の城塞が残されており、瀟洒なハルデンの町並みを眺望できる市民の憩いの場所にもなっています。

  HBWRは、当初、ノルウェー国内の肥料工場の副産物である重水とオランダから供給された天然ウランを用いた、天然ウラン燃料、重水沸騰水型炉(25MWth)として、ハルデンの町中の製紙工場に隣接した岩山の中に設置されました。その特徴は、なんと言っても、原子炉建屋全体(容積4,500㎥)がすっぽり天然の岩屋の中に納まっていることでしょう(原子炉を覆う岩の厚さは50m)。Q214_hrp_model外から見た限りでは、とてもここに原子炉があるようには思えません。どこかの独裁者が聞いたら、大いに喜びそうな設計です。また、材料照射の目的のための利用に加え、プロセス蒸気の製造も行っており、隣接するパルプ工場に供給しています。

 Logo_ife ハルデン研究所の運営主体IFEInstitute for energyteknikk: エネルギー工学研究所)の前身、IFA (原子力研究所:Institute for atomenergi) は、1948年にオスロ近郊のシェラーで発足し、1954年にハルデン炉の設置を決定しています(19596月臨界)。Logo11958年には、HBWRを用いた国際共同照射研究であるOECD/HRPが発足しており、我が国は、1967年にその加盟を果たしました。現在、HBWRでは、20ヶ国の参加を得て共同で行っているOECD/HRPとこれと予算的には同規模の参加国機関との二国間契約に基づく照射研究を行なっています。OECD/HRP予算の約30%は、ホスト国のノルウェー政府がResearch Council経由で負担しているほどの力の入れようです。Large

  同研究所には、炉工学部門と人間工学部門の2部門があり、訪問当時全職員は約280名で、うち炉・照射施設の運転等に約80名が従事。この他、我が国を含め約20名の派遣研究者が駐在しています。

 OECD/HRPがこれまでに大きな成果を生み出し、その意義が認識され、参加国が拡大してきている理由として、Logo2漫然とプロジェクトを継続するのではなく、3年間に研究期間を限定し、研究計画についてのきめ細かい事前・中間・事後評価を行って、さらに継続するかどうかを判断してきたことが大きいのではないかとの印象を受けました。

  原子力発電国でもないノルウェーが積極的に国際プロジェクトを立ち上げ、40年以上にもわたってこれを継続し、世界の原子力安全に多大の貢献をして来ていることに深い感慨を覚えました。

 ところで、訪問時に在オスロ日本国大使のK氏と経済担当書記官Mさんとは、その昔、一緒に南太平洋を訪問したことがありました。出張計画の立案に際して、ハルデンからオスロに戻った際にお二人に表敬したい旨申し入れていましたところ、大使から、折角の機会なので、ハルデン研究所の所長以下関係者も含めて、夕食に公邸へどうぞとお招きを受けました。大使公邸は、有名なオリンピック・ジャンプ台の近くにあり、邸内には素敵な日本庭園もしつらえてあったりして、きっと外国人のお客様には印象深いものだったことでしょう。

 大使のご趣味がフィッシングだと聞き及んだハルデン研究所の日本人部長M氏は、大きな専用ボートを所有しているその道の大ベテラン。お二人はすっかり意気投合し、早速一緒に出かける約束をしていましたが、その後の釣果はどうなったのか、いささか気になるところです。

 甲斐 晶(エッセイスト)

 

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