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インド交通事情

 前回(インド駆け歩き)に続いて、インド在住の日本の友人の招きで、デリー、ジャイプール、アグラのゴールデントライアングルを駆け抜けて来た時の体験記です。Sp1010005_bus_fullpeople

 友人から運転手付きで車を借り受けて3地点を回ったのですが、ジャイプールとアグラ間が片側1車線であったのを除き、いずれも片側2車線以上の比較的整備された、「ハイウェイ」と称する国道でした。しかし、後述するように、よほどの運転技術を備え、インドの交通事情に慣れていなければ日本人ではとても無事に目的地に着けそうもない状況でした。幸いにも、運転手のハラシュは、終始安全運転で大いに助かりましたが、披潤万丈のインド交通事情に、こちらは緊張の連続で、車内で安心してウトウト居眠りする心境には到底なれませんでした。

  Sp1010022_jeep_camelまず、「ハイウェイ」をラクダ、犬、牛などありとあらゆる家畜・動物が闊歩しています。街道筋の小都市・集落に入れば、これに豚、山羊、ロバなど多彩な動物が加わり、これらが道のど真ん中で休んでいたり、餌をあさったりしていて進路を塞ぎます。人間はと言えば、歩行者は勿論のこと、自転車、リヤカー付き自転車、輪タク、オート三輪(リキシヤ)、お客で鈴なりのミニジープやバス、荷台に人や荷物を満載したトラクターやトラック、そして乗用車などあらゆる形態の車両が四方八方から前触れもなく次々に現れますから、これを上手く交わしながらの運転です。Sp1010008_goatherd

  無秩序の秩序とでも言うのでしょうか。交通渋滞時のエトワールを想像していただくのが良いでしょう。相手が必ず避けてくれるものとの前提で、これらが車の前を横切って行きます。事故が起きないのが不思議なほどですが、さすがに途上で、時折、接触事故を起こしているのを目撃しました。

  Sp1010027_localtown_cowcamel中央分離帯のあるハイウェイでも安心は出来ません。下り(デリーから離れる方向の)車線にあると想定してください。脇道から出て来た上り方向に行きたい車は、下り車線を進んでその先の分離帯の切れ目で右折して上り車線に入るのがルールです。ところが分離帯が長過ぎて途中に切れ目が余り無い設計となっているので、先まで進むのが面倒なのでしょう。脇道から上り方向に行きたい車がいきなり下り車線を逆走して来るのです。初めてこれを目撃したときには、我が目を疑いましたが、現実です。大型トラックが猛スピードでこちらに向かって逆走してくるのに立ち向かうのは、実にスリル満点。まるで映画の1シーンのようでした。Sp1010039_3persons_on_scooter

  実は、ハラシュも逆走せざるを得ないことがしばしばありました。故障車があったり道路工事中の箇所では、前触れもなく突然、路上に小枝や小さな岩が置かれ、進路が塞がれていますから、その近辺の分離帯の切れ目で反対車線に入り込んで進まざるを得ないのです。そんな場合に、日本でならば、プラスチックの三角錐を並べて上りと下りの車線を分離し、安全が図られるのですが、インドでは、全く運転手の技量に委ねられるのです。Sp1010036_cycles

 前述した事情によって、ハイウェイの走行車線を人間や動物が闊歩し、ラクダに引かれた荷車などがノロノロ進んでいます。トラックやバスなどのスピードの遅い車も、いちいち進路変更してこれらを追い越すのは面倒なので、ともすれば追い越し車線をそのまま進行しており、しばしばこちらの行く手を阻みます。そうした場合、ハラシュは、クラクションをけたたましく鳴らして、先行車に警告を与え、これが走行車線に寄ったところで追い抜きます。相手が方向指示器の合図を出さずに進路変更してくる可能性があるからです。

 わずか、3日間のインドでの車による旅でしたが、強烈なインド式ドライブ方法がしっかり体に染み込んでしまったようです。無事、デリーから成田に戻り、空港ホテルの駐車場に預けていた車をピックアップして、家路に着いた時のこと。高速道路で追い越し車線を走行中に、走行車線を進んでいる先行車を追い抜こうとして、インド式に思わずクラクションを鳴らしそうになりました。ここは、日本だぞと言い聞かせながら、それでも夫婦して、口で「ブー、ブー」と警笛音を発しながらの帰宅でした。

甲斐 晶(エッセイスト)      

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