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2008年11月

インド駆け歩き

 2002年の初め、インド在住の友人(日本人)の招きで、夫婦共々、デリー、ジャイプール、アグラのゴールデントライアングルを正味3日の滞在で、駆け抜けて来ました。Mapindia2何も好き好んでインドまで出かけなくてもといぶかる周囲の声も有りましたが、インドに惚れ込んで商社勤めを辞めて独立し、インドに住み着いている私の友人の場合もあるわけで、インドの魅力を探りたいと願ったのです。

 インドと日本の時差は、3時間半。3時間でも、4時間でもなく、半端な30分のおまけが付く厳密さに、ゼロの概念を発見したインドらしさを感じます。こうした抽象思考が得意な国民性に加え、英語を自由に操れる人材の豊富さ、アメリカ西海岸とほぼ12時間ある時差を有効に使って作業し得る地理的優位性などから、インドのIT産業、特にソフトウェア 産業が目覚ましい発展を遂げています。とりわけ、南部3州の州都、チェンナイ(昔のマドラス)、バンガロール及びハイデラバードは、ITトライアングル と称され、ハイテク・パーク造りが盛んです。そこでは、外界から隔絶された敷地内に、オフィスビル、宿舎、発電所、通信設備などのインフラが整備され、ハイテク産業が誘致、集積され、著しい業績を上げています。

 28年前にデリーからアグラまで国内線を利用した際には、搭乗手続きを当時外国では当たり前になっていたコンピューター端末ではなく、分厚い大福帳で処理していたことを思い起こすと、実に隔世の感があります。信号待ちの際、日本では、残り時間の目安が赤い逆三角形の棒グラフによるアナログ表示となっていますが、首都ニューデリーでは、残り時間の秒数をデジタル表示しているのを見て、さすが、IT先進国と思わされました。

  インドを形容するもう1つの表現に「世界最大の民主主義国」というのがあります。10india1確かに、人口は、10億を超え米国を遥かに凌いでいますから民主主義体制の国として世界最大には違いないものの、一方でカースト制は、厳然として存在します。それを指摘すると、「バジパイ首相は、最下層出身にも拘わらず、現在の地位まで上り得た。機会は均等である。」との反論がインド人からは返ってきます。理屈が立つ、自己主張が強い、へこまない、ダメもと精神なども国民性なのでしょうか。

買い物や観光地でタクシーに乗るのにも正価が無く、いちいち交渉しなければならないのも、骨が折れます。短期滞在の旅行者では相場が分からずにごまかされ、後味の悪い体験をすることもあります。Ph_10bタージマハールを訪れた際のことです。排気ガスによる汚染を規制するため、1.5㎞手前の駐車場で車を降り、電気自動車タクシーなどに乗り換えなければなりません。昼時なので、途中のホテルのレストランで食事をする間、待っていて貰ってから、タージマハールを訪れ、駐車場に戻るとの約束で、100ルピー(Rs)の値段で交渉が成立。 ところが、食事が終わって出てみると約束の時間を10分過ぎてもくだんの運転手は現れません。フロントに聞くと、流しのタクシーが表を走っているので、捕まえれば、1人片道5Rsで行けるとの話。吹っ掛けられていたのです。まあ、ゲームだと思って楽しむに限るようです。

現地の人々とのふれあいも楽しいもの。車で移動中に休憩のため立ち寄ったレストランで、清掃作業者の監督とおぼしき人物に一緒に写真に入るよう誘うと、何と今まで床の拭き掃除や外の掃き掃除をしていた労働者達数人も加わってきました。デジカメで撮った映像をその場で見せてあげると、今まで苦虫を噛み潰したような監督の顔がニッコリ。いずこも変わらぬ人間性を感じました。

A0029889_11501916衛生状態にそこそこの注意を払えば、料理は、美味しく、値段も安いのが魅力です。多種多様なカレー料理は勿論、朝食の時に、好みの具を入れて目の前で調理してくれるオムレツの味は格別。ナーンの他、チャパティ、パラータなどパン類の種類が多い他、デザートも豊富です。

民族的な柄の刺繍やプリントの綿、絹、ウール製のショールやテーブルクロスの他、手の込んだ金・銀製の細工物など、驚くほどの安さ。どうも家内はインドの魅力にはまってしまったようです。

甲斐 晶(エッセイスト)

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ビジネス・エチケット

 世界を股に飛び回るビジネスマンにとって、エコノミスト誌のウェブサイトは、心強い味方でしょう。無料で提供されるスクリーンセーバーは、宇宙空間に浮かぶ、回転する大きな地球がモチーフです。地球上の地点をクリックすれば、該当する国(地域)の経済指標のみならず、社会、保健、教育などの統計数字が即座に表示されます(世界66ヶ国/地域を網羅)。日本時間の他に、ニューヨーク時間(EST)、ロンドン時間(GMT)及び香港時間が常時表示されますから、時差と戦いながら活動している方々には、実に便利なツールです。Economist_logo   

また、ビジネス先の国々についての経済概況、最近のニュースなど基礎データも充実しています。さらに、外国人ビジネスマンがその国独特の習慣にまごつかないようにと、現地でのエチケット集も載っています。

Tours_moscow3 例えば、モスクワでは、①玄関越しに握手するのは、縁起が悪い、②自宅に招かれた時の手土産は、奇数本の花か箱詰めのチョコレートとする(偶数本は、墓参用)、③酔いつぶれたくなければ、初めから全く禁酒中である(尊敬の的の由)と宣言する、④レストランなどでコートは、受付に預ける(イスの背に掛けるのは顰蹙もので、冬期にはコートに付いた雪が溶けて、床がびしょ濡れになるから)とのことです。

Par_001 パリでは、①ビジネス会合の場合には、割りと時間厳守であるが、食事になると話は違い、定刻どおりに出向くのは、礼儀に反する(フランス人だと招待状の時刻の1時間遅れでも平気で、8時のディナーが9時45分に開始となっても不思議ではない)、②同僚と仕事帰りに一杯というのは余りなく、週末にレストランや自宅でのお茶に招くのが普通、③これまで喫煙には寛容であったが、20081月以降レストランやカフェーでは完全禁煙である、④ビジネスでの服装は、フォーマルな方が賢明、⑤相手と余程親密でない限り、頬への接吻は避け、握手にするのが無難なようです。

Berlin ベルリンっ子は、①単刀直入で真面目なので、商談では冗談を避けること(皮肉や当てこすりは誤解の元)、②自分では大口を叩くのに、尊大さは軽蔑の対象となる、③出会いにも、別れ際にも握手が大好き、④自分のプライバシーに関しては、寡黙で話したがらない、⑤一斉に乾杯する前に飲みだすのは、非礼、⑥嫌煙権を主張するのは、今でも若干不作法だそうです。

Samerica001 さて、地球の裏側のブエノスアイレスでは、どうでしょうか。①商売では、攻撃的態度となる、②口約束は、当てにならない(契約書以外は、信用するな)、③コネが幅を利かす、④挨拶は、相手が男性ならば握手、女性ならば頬と頬を寄せた接吻を一回、⑤全体に遅めの時間帯で執務する(会合が8:30に始まることもあるが、10時になっても誰も出勤していないことも稀ではない)、⑥1月に商談で訪れるのは、最悪(暑い上、夏期休暇で誰もいない)、⑦夕食の開始は遅く、10時は普通で、11時半も稀ではないとあります。

 3mexmexc0009 メキシコ・シティの場合、①赤の他人にも挨拶を交わす、②相手に非礼だと考え、直裁的に「No」とは言わないので、「多分」、「ひょっとすれば」、「チェックしてみます」などの返答には要注意(いずれもNoの意)、③服装は、かなりフォーマル、④昼食が何時間にも及ぶことがある(最低、2時間は見ること)、⑤肩書きを重視するそうです。

 E9a699e6b8afefbc91 香港では、①暑い気候にも拘わらず、服装は、フォーマル、②まず、両手で名刺交換してから握手に移る、③多くの人が中国名に加えて、英語のニックネームを持っているが、アイスとかタバスコ、ペプシなど奇妙な名前も見かける、④結婚しても女性は独身時代の名前のままで、夫の姓は名乗らない、⑤面子を大事にする、⑥置き時計は、贈ってはならない(発音が「死」に通ずるため)、⑦漁船が転覆するとの迷信から、魚を食べるのに身を皿の上でひっくり返さないことと有ります。

 ところで、東京についてどう書かれているかですが、これは、皆さんがご自身でお確かめ下さい。

甲斐 晶(エッセイスト)

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白アスパラガス

  ウィーンに暮らしていると食材に季節感を感ずることは少ないのですが、そんな中で白アスパラガスは、ちょうど筍や初鰹のように春から初夏の季節の到来を人々に告げてくれます。5月ともなると、あちこちのレストランに、「アスパラガス有ります」との看板が出て食欲を大いにそそります。

 Spargel2日本でアスパラガスと言えば、グリーンアスパラガスが普通ですが、ヨーロッパでは、白アスパラガスが主です。28年前にウィーンに初めて赴任した頃には、グリーンアスパラなどどこの八百屋にも見当たらず、戸惑ったものです。旅先のザルツブルグの青空市場で偶然グリーンアスパラを見つけて感激した記憶がありますが、最近では、ようやくウィーンでもグリーンアスパラが手に入るようになりました。国際化のお陰でしょうか。

 0a021fe7ddthumbnail2 実は、グリーンアスパラも白アスパラも本来は同じ種なのですが、直射日光を避けるために盛り土(高さ25cmほどのウネ)によって栽培されるのが白アスパラです。ウネから穂先が出ると日光の作用でまず先端が紫色になり、次第にクロロフィル(葉緑素)が形成されて茎全体が緑色のグリーンアスパラになってしまいます。

Anbau01 そこで白アスパラは、土盛りの中で穂先が延びて地面を割って出る直前に、土盛りの表面の亀裂を目安に収穫します。特に穂先が折れやすいため、独特の道具を使って注意深く採取するのです。どうも日本では、こうした栽培に手間の掛かる白アスパラが農家に敬遠されているようで、このため入手が困難なのではないでしょうか。白アスパラの等級は、穂先の締まり具合、太さ、長さ、真直度などが基準となって値段が決まります。ウィーンでなら一級品でも1㎏あたり800円程度で買えるのに、日本では、インターネットで北海道から産地直送品を注文すると2,5003,000円もしていましたが、最近では、近くの生協でも手頃な値段で売るようになりました。でも、調理の仕方が分からなかったりで、日本で白アスパラが普及するのには、まだまだ時間が掛かりそうです。

800pxspargel_sauce_hollandaise 勿論、ウィーンでもレストランで食べる白アスパラは、良い値段がします。立派な太めのものを5、6本茹で上げてお皿に盛り、オランダ風ソース(卵黄とバターがベースのソース)を掛けたものが1,3002,000円程度します。しかし、たかが白アスパラと侮ること無かれ。実に風味深く、結構お腹が一杯になるのです。まあ、日本の竹の子のようなものでしょうか。

200506ll アスパラガスは、タマネギやニンニクなどと同様にユリ科の植物ですが、多年生で、種をまいてから2~3年でようやく収穫できるようになり、その後10年以上も採取することができます。放っておくと1~2mにも背丈が延びますが、食用には、先に述べたように若い芽のうちに収穫したものを供します。アスパラガスは、雌雄異株で、食用として栽培されるのはもっぱら雄株の方です。

古代ギリシャ時代から、アスパラガスは、利尿作用、鎮静作用のある植物として知られていますが、低カロリーでビタミン(A、B1、B2、C、Eなど)やミネラル(亜鉛など)が豊富なほか、新陳代謝を高め、疲労回復に効果があるとされるアスパラギン酸を含んでいます。日本には、江戸時代に観賞用として伝えられましたが、食用としては、大正時代に北海道で栽培が始まりました。

250pxdc3bcrnkrut5 オーストリア国内最大の産地は、ウィーン近郊のマルヒフェルト(Marchfeld)で、約150haに作付けされ、年間約750tと国内生産量の約70%を占めるに至っています。シャンペンなどの名称と同じようにマルヒフェルトアスパラガスの名称は、生産地商標としてEUによって正式に認定され、保護されています。(このあたりの事情や、アスパラガスに関する興味深い情報が満載のサイトをご覧下さい。ただし、ドイツ語です。)43023400x500

ウィーンに5月から6月下旬にかけてお出かけになる機会があれば、是非ともレストランで実際にお試し下さい。オランダ風ソースの代わりに、バターソースにお醤油や準和風に鰹節とお醤油でも結構行けます。また、ワインビネガーとオリーブオイルに胡椒を振ったものをお皿に入れ、穂先で掻き混ぜながら食べるのも乙なものです。

甲斐 晶(エッセイスト)

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たい焼き焼いた

 080319_part01_09 たい焼きに「天然物」と「養殖物」があるのをご存知でしょうか。これらは、「たい焼きの魚拓」という本を出された写真家宮嶋康彦氏の命名です。一世を風靡した「およげ!たいやきくん」に歌われているような、鉄板の上で焼いた大量生産のもの(これを氏は、「養殖物」と呼んでいます)ではなく、一匹ずつ焼いたのが「天然物」です。天然物は、職人がひとつひとつ丁寧に焼き上げるので、どうしても手間ひまが掛かり、非効率的で、いずれ滅び行く運命にあると、氏は断じています。

41hfd0z1fvl__ss400_ この本は、氏が20年ほどの歳月を掛けて全国を歩き、「絶滅寸前の『天然物』たい焼き37種」を収集したもので、それぞれの魚拓とともに、体長、体高、体重、値段、採取地、電話番号などのデータを収録。併せて、採取にまつわる逸話、主(あるじ)の人となりなどがエッセイ仕立てとなっており、読み物としても大いに楽しめます。

51243byd84l__ss400_ ある時、日光で釣りをし、釣果を魚拓に取っていた際に、たまたま食べずにいたたい焼きに気付き、面白半分にその魚拓を取ったのが採取の始まりだったとか。氏によれば、我が国で初めてたい焼きを魚拓に取ったのは、映画監督の山本嘉次郎氏1902~1974)ということになっています。

東京では、味の良さから「麻布十番・浪花家総本店、「四谷見附・わかば」、「人形町・柳屋」がたい焼きの「御三家」と言われていますが、さすがにこの本には、御三家全てが採録されています。

Im5408_anrutsu 「わかば」(新宿区若葉1-10)を絶賛したのは、寄席芸を好み、下町の人情を愛した「あんつる」こと安藤鶴夫氏(19081969)で、シッポにまでアンが入ったのを見つけ、「いまどき、こんな誠実な」と、いたく感激。読売新聞のコラムで取り上げた結果、「わかば」はすっかり有名になったのです。その包み紙には、「鯛焼のしっぽにはいつもあんこがあるように。それが世の中を明るくするように。」との氏の言葉が印刷されています。 

Rc_o05_yamakaji 安藤氏の見解に異を唱えたのが、「元祖」浪花家総本店を贔屓にし、食べ物エッセイを多く著した山本嘉次郎氏で、両者の間で有名なたい焼き論争が繰り広げられました。

この浪花家総本店(港区麻布十番1-8-14)の創業は、明治42年で、当主は4代目の神戸正守氏。初代が大阪から上京して今川焼きでも始めようとしましたが、丸い型では芸がないと庶民には高嶺の花である尾頭付きの鯛をモチーフにしたところ、大当たり。現在、7店ほどがのれん分けし、最近では佐久店ができました。また、「およげ!たいやきくん」のおじさんのモデルにもなった先代の守一氏は、山本嘉次郎氏の金婚式でコック帽と蝶ネクタイでたい焼きを披露したこともあり、以来、この姿で焼いているとは、宮嶋氏の本にある記述ですが、インターネット上の4代目当主はバンダナ姿。代替わりで伝統は失われたのでしょうか

 15769_yanagiya 一方、「柳屋」(中央区日本橋人形町2-11-3)は、店先で踊るようにどんどん焼き上げる職人さんの楽しいパフォーマンスが特徴です。これは、たいの焼き型1つが2㎏と重いので、体全体でバランスを取りながら支えようとして、自然発生的に生まれたようです。

 617m8yr56cl__ss400__2 収集された37種の「天然物」の魚拓を見ていると、それぞれに、豊かな個性と独特の表情があるのが分かります。美形のが有るかと思えば、使い込まれた焼き型のため、目や鱗のはっきりしないものもあります。通常よりも、ふた回りほど小粒のもの。尻尾をぴんと跳ね上げた威勢のいいものや普通の尻尾のもの。雌雄ペア(鱗の数が多く全体に丸っこい方がメス)もあれば、顔がムツゴロウ風のもあります。中味の餡がうぐいす餡や白餡の「亜種」も記載されています(最近では、カスタードクリームの「変種」も現れているようです)。

 所詮、たい焼きは、高級な和菓子では有りません。しかし、「天然物」のたい焼き、特に御三家のものは、たかがたい焼きと言ってはいけないようです。ひとつひとつが手焼きで、餡もじっくり時間を掛けて作り上げた上品な甘さ。実に、「たかがたい焼き、されどたい焼き」といった奥の深い世界なのです。

甲斐 晶(エッセイスト)

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英語の氾濫

 今や英語は、世界の共通語となりつつあります。特に、インターネットの発達・普及に伴って、日常生活においても、英語に依存せざるを得ない場面が益々拡大しています。

218321101 英語が意思疎通のための世界共通の言語としてその地位が高まるにつれ、ひと昔前には、国際会議において、頑なに自国語のフランス語以外は喋らなかったフランス人も、今ではちゃんと英語で発言するようになってきました。もっとも、当時は、フランス政府関係者は、仏英間の通訳が得られる場合には、自国語以外の言葉で発言することが禁じられていたとのことでした。従って、IAEAなどの専門家会合において、フランスからの出席者が1名いたために、通訳付で会合を運営せざるを得ないと言った不都合がしばしばあったものです。     

Scrn21 一方、英語の普及に伴って、色々な母国語の人たちが英語を操るようになってきましたので色々な訛りの英語に習熟する必要が出てきました。日本人にとって、特に苦手なのは、インド人の訛りではないでしょうか。独特の抑揚に加えて、喉の奥からのこもったように発する英語には、てこずります。彼らは、英語の達人を自認していますので、なおさらで、話すスピードも立て板に水です。国際会議などで、プロの日本人通訳がインド訛りの英語に立ち往生する場面に遭遇したりします。

79936099_07fbcaaa1f このほかにも、語尾がはっきりしなくなる傾向の中国人(香港や台湾の通関などで苦労した経験があります)、発音がなんとなくまろやかになるタイ人、「ザジズゼゾ」が全て澄んで「サシスセソ」になってしまうラテン系の人々の英語(フィリッピン人の英語もこの範疇です)にも慣れる必要があります。11

もっとも、各国の多様な訛りの英語の使い手が登場し、これが一般化しつつあることで、日本語訛りの英語も、次第に市民権を得つつあります。日本人の場合、英語独特の強弱のリズムが出来ずに、ともすればフラットに成りがちです。また、rとlの区別が出来ず、thの発音がおぼつかないことは、良く知られていますが、意外にもiwの発音も実は、上手くは無いのです。”world”という言葉を英語が母国語の人に言って、すぐ通じるようなら、あなたの英語のレベルは、相当なものです。

20060612215426 英語の特定の発音に苦労しているのは、何も日本人ばかりではありません。ドイツ人は、日本人と同様に”th”の発音が苦手なことに加え、ジャ、ジュ、ジョに相当する音がドイツ語に無いために、大いに苦労しています。ドイツ人がJapanを英語読みにする場合、ちゃんと<ジャパン>と言えないで、<チャパン>に近い発音になってしまうようです。<ジャ>という音をドイツ語で表記するのも一苦労で、ジャングルは、Dschungelと表記されます。Dschungelamaequator

ドイツ語表記での”Ja”は、の音になってしまいます。”Ja”は、英語ではではなく、ジャだと余りに強く意識しすぎたのか、マヨネーズと言うべきところをマジョネーズと言ってしまったドイツ語圏の友人が身近にいます。最近、和食ブームのウィーンで、鉄板焼きを、Teppan-jaki”と表記していますが、くれぐれもこれを鉄板ジャキとは、読みませんように。

英語由来の言葉が外来語として多数日本語に入ってしまった結果、困ったことも起こっています。てっきり、英語とばかり思って、英語風に発音するのに相手に全く通じないということが、ままあります。ガーゼ(gauze)、ピンセット(tweezers)、ペンチ(pliers)、ナイター(night game)、レガーズ(leg guard)、ピエロ(clown)など枚挙に暇がありません。2007_08_07clown

明治時代には、先達たちが漢語への造詣を生かしながら、多くの外国語の訳語を苦労して案出してきました。社会、科学など、中国語に逆輸出された例もあります。しかし、現代では、目覚しい技術革新とこれに伴う技術導入の結果、英語をそのままカタカナ化して済ましてしまうことが当たり前になっています。この結果、外国人通訳が日本語をその国の言葉に訳するのに、こうしたカタカナ語の元が不明で、苦労が尽きないようです。

甲斐 晶(エッセイスト)

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