« ウィーンのお正月 | トップページ | チロルでのロングステイ »

セキュリティ・チェック

 Pan_am_747_lax 2001年9月11の民間航空機を用いた米国多発テロ事件の前のことでしたが、国際線・国内線を問わず、米国の航空会社の便に乗ろうとすると、搭乗手続きの際に必ずなされるセキュリティ上の質問が2つありました。第1は、「お預けになる荷物は全てご自分のものですか、誰かから運ぶように頼まれたものは無いですね」。そして、「荷物を詰めてから、ずっとあなたが管理されており、目を離されことはありませんね」というものです。198812月にスコットランド、ロカビー町の上空でロンドン発ニューヨーク行きパンアメリカン航空103便が、Image1 リビアのテロリストが積荷に仕込んだ爆弾により空中爆破され、乗員乗客など270名の命が失われた事件以来、持ち主不明の荷物を積み込ませないよう、厳重なチェックが行なわれるようになったように思います。

一時期、例えばフランクフルトで米国の航空会社の便に乗り換えると、チェックイン済みの自分のスーツケースがタラップの下に並べられており、搭乗前にそれを指差し確認しないと、その場に取り残される程の厳しさでした。従って、当時、米国の航空会社は敬遠されたものです。(その後も、インドの国内線の一部や中央アジアの一部の路線では、治安上、同様の厳しい措置が取られました。)

Img10574653421 しかしながら同種の事件が久しく起こっていなかった2001年9月11日以前には、随分と簡略化されており、その直前、米国の国内線を利用した際には、この質問を紙に印刷したものを係員が指で示して、イェスかノーかを尋ねるだけでした。

ある時、この質問に余りに馬鹿正直に答えたために、ひどく手間取ったことがありました。ホテルをチェックアウトしてから空港に行くまでにかなりの時間が有ったので、その時間までポーターに荷物を預けたのですが、搭乗手続きの際にそのことを係員に正直に告げました。すると、一瞬係員の目が輝き、私は、荷物と共に別室に招き入れられたのです。スーツケースを開けさせられ、中の品物をひとつひとつ、見慣れぬ怪しいものは無いかどうか、しっかり確認させられてしまいました。私は、パッキングの名人を自認しており、靴の中に下着をぎっしり詰めたりして、限られたスペースを有効に使い、Johntierney要領良く最大限に品物を詰めてあります。取り出すのにも、元通りに詰め直すのにも大いに手間・暇を要し、苦労しました。以来、この種の質問には好い加減に答えるようになりましたが、 似たような体験により同様の結論に達したJohn Tierney 氏の書いたニューヨークタイムズのコラムに意を強くしました。

 彼は、国際線で十年以上前から、国内線で1995年から行なわれてきたこれらの質問によって、どれだけ乗客の安全が確保されたかを計るのは難しく、真面目に答える意義があるのかとしています。「米連邦航空局(FAA)は、0409faa_logo過去15年間に3個の爆弾が発見されたことから、この質問の継続を主張しているが、いずれも国外の空港での事例であり、国内では、ほぼ半世紀前の1955年に、ある男性が保険金目当てに自分の母親に爆弾入りの包みを渡し、乗っていた飛行機が爆破された事例である。しかし、仮にこれらの質問が当時なされていたとしても、その母親が自分の息子からの包みをあえて申告した確率はどれ程のものか。」と論じています。米国の国内便を利用する延べ65千万人の乗客の半数が、この質問に一回あたり15秒間真面目に考えたとして、年間では、約8,100分=154年にもなり、毎年ほぼ二人分の生涯が費やされることになり、一人の命も救ったことがない規則の犠牲になっていると試算しています。

しかし、2001年9月11日以降、内外の空港でのセキュリティ・チェックは、一層厳しくなりました。先の質問は廃されるとともに、これまで引っかかったことの無かった、Vm_54091_sol_a02 キーホルダーに付けたミニ・ナイフ(刃渡り3.5cm)でさえ、航空会社に預ける荷物の中に入れるように指示されます。米国では、セキュリティチェックの際に、ハサミやナイフが見つかると、没収されるか、お客が旅先から戻ってきて受け取るまでの間の保管料を請求されるそうです。まあ、安全上、ある程度の不便は我慢せざるを得ないのでしょう。

甲斐 晶(エッセイスト)

|

« ウィーンのお正月 | トップページ | チロルでのロングステイ »

」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« ウィーンのお正月 | トップページ | チロルでのロングステイ »