チロルでのロングステイ
昨年から、団塊世代が大量に定年を迎えるようになり、定年後の第二の人生をどのようにして過ごすかが大きな関心を集めています。これまで出来なかった趣味に打ち込んだり、新たな資格を取ったり、地域活動やボランティア活動にデビューしたり、炊事・洗濯・アイロン掛けなどの家事をマスターして自立した夫となるなど、色々なアイデアがあるようです。そんな中で、治安や環境の良い国でのロングステイが注目を集め、各地でこのためのセミナーが開催されたりしています。
オーストリアで優雅なロングステイを目指すシニア層に特にお薦めの本がオーストリア大使館商務部との連携によって書かれた「オーストリー、優雅なロングステイの愉しみ」(相原恭子著:東京書籍)です。オーストリアについての基本情報を含む ロングステイのための基礎知識に始まり、日本人向け受け入れ態勢の整った各地方のサポート状況、滞在先、病院・薬局、その地での過ごし方の例など、役に立つ情報が満載です。
オーストリアの場合、どこの観光地でも長期滞在型のアパートがあって、手頃な値段で利用できます。食器は勿論のこと、調理道具や冷蔵庫、洗濯機まで完備していますので、自炊が可能で、滞在費を安く抑えることができます。
この本には、スーパーでの買い物の仕方に始まり、洗濯機の使い方(オーストリアでは、全自動洗濯機の場合でも熱湯を湧かして洗濯物を煮沸するプログラムが普通なのです)、ごみの出し方に至るまで、日本の生活習慣と違う点が実にきめ細かく書かれており、実際に現地で生活して戸惑うことの無いよう、温かい配慮がなされています。
オーストリアでロングステイを志す理由には、異文化に触れて見たい、その土地の風土やライフスタイルを知りたい、現地の方々と新たに交流をしたい、錆び付いたドイツ語を磨き直したい、音楽の本場で声楽や楽器のレッスンを受けたい、若い時に駐在した街にもう一度住みたい、大自然の中で健康的でゆったりした生活を楽しみたい、音楽三昧・芸術三昧の日々を送りたい等多種多様でしょう。この本には、
ウィーン、バーデン、ザルツブルグと言った超有名地ばかりではなく、日本では余り知られていない、温泉地や保養地、 チロルの片田舎などが紹介されており、様々なニーズに対して十分応えられるものになっています。
例えば、ウィーンでは名所旧跡を見て回ったり、音楽会を楽しんだり、美術館巡りをしたりする他、ウィーンの森の散策、アウガルテンでの絵付け、市民大学での受講など、伝統と歴史に支えられた文化の都を体験するプランが紹介されています。
モーツアルト、ベートーベン、ヨハン・シュトラウスなどが訪れ、ハープスブルグ家の夏の都とも言われた保養地、バーデンでは温泉保養、カジノ、オペレッタの楽しみなどが挙げられています。
また、モーツアルトの生誕地、ザルツブルグでは、土産物として有名なゲヴュルツビンデン(乾燥ハーブ、スパイスなどを用いたリースやブーケ)造りへの挑戦、造形芸術の夏期アカデミーへの参加など、ひと味違った楽しみ方が示されています。
この他、湖水地帯で、湖で採れた新鮮なマス料理を土地のワインで楽しんだり、バート・ガシュタインなどで、温泉とエステを満喫し、 旧坑道を利用したラドン治療を受けたりなど、様々なゆったりライフの過ごし方が提案されています。
そんなオーストリアのロングステイを紹介するセミナーのひとつが商務参事官公邸で開催されました。30名ほどの参加者が、チロル州クラムザッハ村を代表する観光局幹部の説明に熱心に聞き入っていました。この村は、長野県安曇野市(旧豊科町)と20年来の姉妹都市関係にあり、既に日本からのロングステイヤーの受け入れ実績もあります。人口4500
人の小さな町ですが、治安は良く、人情味豊かな人々との交流を楽しめそうです。観光局を通して予約すれば、ザルツブルグまでのお迎えなど特別なサービスもあり、現地の方と結婚してアパートを経営する日本人女性などがきめ細かい現地サポートをして呉れるそうです。風光明媚なチロルでのロングステイはいかがでしょうか。
甲斐 晶(エッセイスト)
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