続・和製英語
前回(和製英語)は、T社のRV車に装備されたスペアタイヤのカバーに書かれた意味不明の英文コピーを例にして、変な和製英語の宣伝文句や製品名が身の回りに多く見受けられることを指摘するとともに、そうした英文コピーなどを英語を母国語とする人にチェックして貰おうともしない日本人の英語感覚の不思議さについて触れました。
また、T社との手紙のやりとりにおいて、①T社としては、明らかな誤りではないものの分かりにくい表現なので、改める方向で検討すること、②ただし、変更の時期や表現内容については、未定であり、③コピーの表現の趣旨については、当方に通報するほどのものではないとの極めて慇懃無礼な回答ぶりに接し、失望したことを紹介しました。
さて、その後1年以上も経ったでしょうか。こうしたやりとりのあったことすらすっかり忘れてしまっていた頃、再び私の前を行くT社のRV車のスペアタイヤのカバーに書かれた英文コピーがすっかり変わっているのに気が付きました。今度のは、"Society should reflect on the earth's tender environment."と、前のに比べてずっと簡潔になりましたが、やはりどことなく変です。前と同じ国際会議に再び参加する機会があったので、前回と同様に英語を母国語とする参加者にこのコピーからどんなメッセージが得られるか、改善するとすればどういう表現にすべきかを尋ねて見ました。
今回は、N社のRV車に装備されたスペアタイヤのカバーに書かれた英文コピーも奇妙奇天烈でしたので、併せて同様の質問をして見ました。N社のは、こんな表現です。"Whenever and every-where we can meet our best friend---nature. Take a grip of steering."
T社の修正版については、多分「やさしい」地球環境という趣旨で使ったと思われる"tender"という単語が不適切で、その意味でならば"gentle"という言葉を使用すべきと言うのが一致した意見でした。「社会は、地球環境が損なわれやすいものだということに留意すべき」とのこのコピーの趣旨を全員が理解していましたので、前のに比べると大きな進歩です。ただ、"tender"と"gentle"の間違いを指摘されたことを考えると、このコピーも英語を母国語とする人のチェックを受けなかったのでしょうか。残念です。
一方、N社のコピーを見たとたん,誰もが吹き出していました。コピーの意味が分からないと言うのです。箸にも棒にも掛からない代物のようで、強いて言えば、「車でなら、行けないはずのところにでも行けるようになる」との意味だろうかとしていました。改善案として、"Everywhere we are surrounded by nature, which we should respect. Be responsible in your actions, keeping in mind their effect on the environment"を挙げている人もいました。
いずれにしても肝要なのは、英語が母国語の人にチェックして貰う手間を厭ってはならないと言うことです。同じようなことは、オリジナルが英語のものを日本語に訳す場合にも言えます。あるテレビ番組で紹介していましたが、ロスアンジェルスにあるユニバーサル・スタジオのレストランの日本語メニューが傑作だったのです。
まず、表紙がいきなり「日本人の」となっています。これは、"Japanese"(日本語)の訳のつもりなのでしょう。中を開けると、"Diet Sandwiches"が「国会サンドイッチ」、"French Flies"が「フランス人の稚魚」、"Chicken Salad"が「青二才のサラダ」、"Ham with Cheese"が「アマチュア無線家、そしてチーズ」といった具合。実に噴飯ものの誤訳のオンパレードなのです。いずれもその英単語には、確かにそういう日本語の意味もありますが、前後関係からなぜわざわざそんな訳を付けたのか不可解です。簡単な翻訳ソフトでも使ったのでしょうか。
このメニューは、最終的にはちゃんと日本人に訳を見て貰ったというのですが、一体どんな日本人に見て貰ったのでしょうか。
甲斐 晶(エッセイスト)
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