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イモリエ

 Logo原子力関係者にとって我が国原子力開発の発祥の地、茨城県東海村はいわばメッカのようなものです。ここを訪れたことのない原子力関係者はいないことでしょう。 

 東海村や近隣の市町村、ひたちなか市などで有名なのが乾燥芋(干しいも)の生産です。茨城県は干しいも、れんこん、鶏卵、みつばの生産額がいずれも全国第1位を誇っていますが、Simbol中でもひたちなか市(勝田市と那珂湊町が合併して形成)はその干しいも生産の大部分を占めています。今度、八百屋で国内産の乾燥芋の袋を手にしたら、裏をひっくり返して生産地の記載を見て下さい。十中八九がひたちなか市です。 また、冬期に東海村やひたちなか市などを訪れると、あちこちのビニール・ハウスで農家の人たちが乾燥芋作りに精を出しているのを見かけますし、毎年、建国記念の日に行われる「勝田全国マラソン」では、完走すると記念に干しいも(乾燥芋=完走芋の洒落)が貰えるほどです。20080112100205

 「干しいも」の正式名称は、「甘藷蒸し切り干し」と言い、アルコールの原料となる「甘藷生切り干し」と区別しています。干しいもの材料となる芋の主力であるImo_tamayutaka_c タマユタカは短紡錘形で大きく、皮の色は両端に淡紫紅色を帯びた黄白色をしています。生食用のベニアズマや高系などと違ってそのままではまずくてとても食べられないしろもの。元来は澱粉原料用及び飼料用品種として育成されましたが、蒸し切り干しに適していたため、現在は蒸し切り干しの主力品種となっているのです。

 ひたちなか市近隣はさつまいも収穫のほぼ北限にあたります。乾燥芋作りは、冬寒くなって乾燥した西風が吹くようになってから始まります。Imotop5 秋に収穫しておいたタマユタカを蒸気で蒸して、皮をむき、スライスしたものを1枚、1枚すだれの上で天日乾燥させたものが「平干し芋」です。 これに対して、形の小さなタマユタカを蒸して、丸のまま皮をむいて乾燥させたものが「丸干し芋」です。これは、平干し芋よりも割高ですが、風味豊かで、柔らかな口触りが楽しめ、一度味わったら病みつきになること請け合いです。Imotop4

 乾燥芋作りは、冬寒くなって乾燥した西風が吹くようになってからと言いましたが、気温が高かったり、湿っていたりすると腐ってしまうので、程良いタイミングを見極めるのが重要ですし、暖冬の時は出来が悪くなります。天気が良く、乾燥した日が続けば4日位で出来上がりますが、朝早くから蒸したり、乾燥中の芋を裏返したり、夜間、乾燥中の網を重ねて蓋をするなど、1つ1つが手作業ですから、大変、手間のかかるものなのです。81f04d04

 東海村やひたちなか市、大洗町などの近郷の出身者が多い職場に以前勤めていたときには、冬場になるともっぱら干しいも談義に華が咲いたもの。まずは、干しいもはそのまま食べるのが正式か、焼いて食べるのが正式かから始まり(固くなれば揚げるとか)、どこのものが最高かに話が及びます。門外漢である私にとっては、茨城県内のどこの産のものでも美味しいと感ずるのですが、干しいも専門家に依れば全然味が違うというのです。

 一度、そうした「干しいも専門家」の前でうっかり、「冬に東海村に出張すると必ず生協で乾燥芋を買うんだが、東海村の乾燥芋はとても美味しいねえ。」と口を滑らしたところ、猛反撃を受けました。東海村のは二流で、一流はひたちなか市のX地区農家のものだとのこと。第一に芋が違うのだそうです。かかる専門家に依れば、特定の農家と契約をしていて、毎年、一定量の出来た干しいもを買い取っているようです。しかもその農家の名前は、他人には極秘扱い。なかなか教えて貰えません。余りの自慢ぶりなので、論より証拠。実物をお裾分けして貰い、少し食べさせてもらいましたが、さすがに違います。とても柔らかくて、甘さもたっぷり。羊羹のような味わいでした。

  辛党の世界では、日本酒の聞き酒やワインのソムリエというのがあります。干しいもの世界でも、産地ごとに専門家による格付けを行ったらどうでしょう。聞き酒ならぬ聞き芋、ソムリエならぬ芋リエの登場です。

甲斐 晶(エッセイスト)

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