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メープルシロップ

 Ca カナダは、国旗の図柄にもなっているように、カエデ(maple;)がそのシンボルです。ある秋にオタワ、トロントに出張した際には、正に紅葉たけなわの候。夕陽に映える黄色や紅に染まった楓の葉の透明感溢れる光景が心に残りました。Mapleleaf735828

 さて、この楓からシロップや砂糖が採れるのをご存じでしょうか。それぞれ、maple syrup(カエデ糖蜜)maple sugar(カエデ糖) と呼ばれています。独特の味と香りで、焼き上がったパンケーキやワッフルに琥珀色のメープルシロップをかけると最高。高価なのですが病みつきになります。Qmaple_syrup

 北米大陸の原住民が傷ついた楓の枝から滴った樹液がつらら状に固まったものを見つけ、口にしたのがカエデ糖の始まりとか。次第に樹液を煮詰めて作る方法を修得。これを旧大陸から北米へ移住した人々が原住民から習ったようです。

 Maplesugar こうして得られたカエデ糖は、次第に自家消費だけではなく商品として売買されるようになり、植民地の重要な産品になりました。しかし、時代が進んで1890年以前に保護関税が廃止され、安いサトウキビ糖が国外から輸入されるに及んで次第にカエデ糖の売れ行きは悪化。むしろメープルシロップの人気が高まり、カエデ糖に代わってビンや缶入りで生産されるようになりました。

 メープルシロップ作りは、雪解けの始まる早春、気温が夜間は氷点下ながら日中は2~7℃まで上がる日が2、3日続くようになると始まります。この頃、サトウカエデ(acer saccharum)は、夏の間に蓄えたデンプンを糖に変え樹液として根から吸い上げる作用が最も盛んで、出来るシロップも上質です。しかし、気温がさらに上がり、夜間でも氷点下にならず、枝先の芽が膨らみ始める頃になると樹液の量が著しく減り、シロップ作りの季節は終わり。この間わずか数週間なのです。

 Maple1 樹液の採取は、樹齢が40年(幹の太さが25cm)ほどになると可能です。直径1cm、深さ4cm位の孔を幹に数カ所(太さ20cmあたり1カ所の割合)開け、差し込んだ管の先に容器を吊し、樹液を溜めます。この程度であれば採取によって木に悪影響はなく、樹齢100年位になるまで採取が可能。管をはずせば孔は翌春までに自然に塞がるそうです。

 Sefront 樹液は透明でやや甘い(糖分を2~3%含有する)液体で、シーズン中に1つの孔当たり平均して約40㍑採取できます。樹液は劣化しやすく採取後手早く蒸発濃縮する必要があります。伝統的には木に吊した容器に溜まった樹液をバケツで集め、さらにそれをそりや荷車に積んだタンクに移します。運搬にはトラクターや時には馬が用いられ、濃縮作業を行なう小屋(シュガーハウス)に集積されます。しかし最近では木に打ち込んだ管からの樹液を農園内の傾斜を利用した配管システムによって自動的に収集。効率化されています。

 Maple3 シュガーハウスでは蒸発濃縮器によって樹液を104℃まで加熱して煮詰め、糖分約66%のメープルシロップに仕上げます。約40㍑の樹液からできるメープルシロップはわずかに1㍑弱。高価なわけです(小売価格は1㍑当たり10米ドル程度)。製品の等級は、米国の場合にはLight,Medium,Dark Amberの3つがありますが、これは品質の違いではなく琥珀色の濃さによる分類です。好みにも依りますが、色の濃いほど香りが強くなります。Maple5

 メープルシロップの生産は北米の北東部が中心。カナダが世界生産の3/4、うちケベック州がその90%を占め、米国ではバーモント州が米国の1/3を生産しています。私の留学先のミシガン州でも生産。知り合いの大学教授の場合、広大な自宅の敷地内にサトウカエデが沢山あり、樹液の収集に小型蒸気機関車を使っていて敷地内に軌道を敷設。毎年春になるとこれを友人・知人に開放し、我々家族も招かれましたが、アメリカ国内各地から多数の鉄道愛好家が集まっていました。

  ヨーロッパ大陸でもナポレオンの時代に英国の海上封鎖に対抗してメープルシロップの生産が試みられましたが、春の到来が急激過ぎて樹液量が少ない、カエデの種類が違って含有糖分量が少ないなどの理由で上手く行きませんでした。我が国の場合北海道あたりで試したらどうでしょうか。              

甲斐 晶(エッセイスト)

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