公衆マナー
欧米で生活した方々が日本に帰国して見て、
彼我の違いに気付くことのひとつに、公衆のマナーやエチケットがあります。
例えば、米国などでは、見知らぬ者同士であっても、ホテルなどのエレベーターで一緒になった場合、必ず「ハーイ」と笑顔で挨拶を交わします。日本では、同じマンションの住人同士でも無い限り、こうした場合、お互いに無言のままでしょう。
また、欧米では、
電車の中や人混みで思わず体が触れ合ったりすると、必ず「失礼」と言う言葉がどちらからともなく発せられ、大いに気持ちの良いものです。日本だとお互いに黙ったままですし、ともすれば満員電車の中で足を踏まれても、相手に無視されたままということが良くあります。
さらに、建物の出入り口などで、締まり掛かったドアを押さえて、後から続いて入ってくる人のために開けたままにしていると、欧米では、後から入って来た人から必ず「有り難う」という感謝の言葉が返ってきますが、残念ながら日本では、ごく当たり前のような顔をしてそのまま目の前を通り過ぎて行くのが関の山。腹立たしいことしきりです。
こうした、何気ない挨拶がごく自然に交わされることで、社会生活が円滑に進むのです。欧米の公衆マナー、エチケットの基本にあるのは、相手への思いやりの心ではないでしょうか。社会的弱者へのいたわりの気持ちが態度や行動に良く表れた公衆マナーの例をウィーンの路面電車やバスで日常的に見かけます。それは、赤ちゃんを乳母車に載せたお母さんが乗降しようとする際の乗客の対応です。
戸口にいる男性乗客は、若者であれ、お年寄りであれ、そうしたお母さんの姿に気づくや否や、さっと乳母車に手を伸ばして抱え上げ、車内に引き入れます。
戸口のそばには、乳母車専用の固定場所があり、ここに安全に置くことができます。降車の際も同様に身近の男性客が乳母車を持って、お母さんと赤ちゃんが無事に降りられるまで手助けするのです。
それでは、日本の場合にはどうでしょうか。電車に乗ろうとしていたお母さんが、赤ちゃんを載せたベビーカーを締まり掛かった電車のドアに挟まれてしまい、車掌も気づかぬままに電車が発車。お母さんはホームに取り残されてしまって、パニックになります。そばにいた乗降客がようやくこれに気づいて車掌に合図。電車はベビーカーを挟んだまま数十メートル走行後、ようやく停止し、幸いにも赤ちゃんは無事であったとのニュースがありました。似たようなことがその後も続きました。
こうした危険の再発防止のために、鉄道会社はベビーカーのお母さん方に駆け込み乗車をしないように呼びかけるキャンペーンを開始するとの報道に接して、家内の義憤は最高潮に達しました。お母さん側に注意喚起するのではなく、ウィーンのような乗客の公衆マナーを涵養すべきとの意見なのです。
早速、JR、西武鉄道、東急電鉄のお客様係に電話をしたようです。3社のうち対応が良かったのが東急で、JRが最悪であったとか。
家内の主張はこうです。ベビーカーのお母さんは、好き好んで駆け込み乗車をしているわけではない。ベビーカーを抱えてお母さんが悪戦苦闘しているのに、乗客は誰一人助けて呉れない。電車が停車し、ドアが開いても、どっとお客が乗り降りするので、ベビーカーは取り残されてしまい、直ぐには乗れず、どうしても発車間際になってしまう。これを解決するには、ウィーンのように乗客が進んで手助けするよう、公衆マナー向上のキャンペーンを実施すべきである。
これに対してJRの担当者は、「昔はベビーカーなど無く、背負い紐だったのでこんなことは無かった。困ったもの。」とのネガティヴな反応だったとか。家内は猛反撃を開始し、ウィーンの事情を懇切に説明。携帯電話の車内での通話が無くなったように、根気よくキャンペーンすれば、状況は変わると説明し、ようやく先方の賛同を得たようです。
でも、何故、3社だけで京王電鉄には言わなかったのか家内に尋ねると、娘が自分の家から我が家まで孫を連れてくる経路に当たるのが、東急電鉄とJRと西武鉄道だからとの明快な答え。げに恐ろしき、孫思うおばあちゃん心(老婆心)でしょうか。
(エッセイスト)
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