« 薬草 | トップページ | アフリカ・ツメガエル »

亭主のへそくり

 パーティーなどでの欧米人との会話で「日本人の奥様方は貞淑で、亭主を良く立てるそうで大変に羨ましい」という話になることがあります。そんな時には、「日本人のご亭主はその多くが給料袋を貰うとそっくりそのまま奥方に渡してしまい、家計は奥様方が切り盛りするのが普通だ」と教えてあげるとみんなびっくりします。

 欧米ではロシア人だけが日本人と同じシステムでご主人が奥様に給料袋をそっくり渡すのですが、そのほかは皆ご亭主が家計を握っているのです。

このように女性に実権が無いからこそ、欧米でレディー・ファーストがやかましく言われ、ウィメンズ・リブ運動が盛んなのでしょう。

 ところで我が日本ではご亭主がお小遣いを奥様から分けて戴くという力関係から、世のご亭主の涙ぐましいまでの「へそくり捻出大作戦」が展開されるのです。Img10582861422

 これはある先輩のことです。当時は結婚したてでまだ世間知らずの奥様であることを良いことに、国内出張の度に「金が必要だ」と言って、まんまと旅費をせしめていたつわものがいました。きっと出張旅費は自前なんだなどと言って新妻をたぶらかしていたのでしょう。その後、真相が判ったときの顛末がどうだったかは残念ながら聞き漏らしてしまいました。

 さて次は公務員や独立行政法人などの職員の場合です。人事院勧告がなされ、その年度の4月に遡ってベース・アップが行われると、現行給与との差額が数ヶ月分まとめて、ボーナス日に相前後して支給されます。これを奥方に内緒にするというわけなのですが、生憎と公務員住宅や職員住宅に住んでいるとこの目論見も水泡に帰す場合が多いようです。というのも奥方同士で「どうも差額が出たらしいわよ」と情報交換が行われ、奥様族の知るところとなるからです。しかも最近は給与の銀行振込が普及しましたので、差額も直接銀行口座に振り込まれるようになってしまい、残念ながらこの手ももはや効かなくなりました。

 同僚によれば、次なる手はカードの使用です。Cardimg_8_1172561344 手元不如意になるとカードで買い物をし、12ケ月後に給与の振込先の銀行口座からの引き落としを狙うしのだそうで、奥様がこれに気が付かなければしめしめというわけです。これには同僚と割勘で一緒に食事に出かけた様な場合に、レジで取り合えずカードでまとめて払っておき、同僚からは別途それぞれの割当額を徴収して、その分を臨時収入とするという奥の手もあるようです。

 マージャンやパチンコTc037_3_2 などの特殊技能をお持ちの方はこれで稼ぐという方法もあるようですが、時には給料分そっくり負け込んで禁治産者(これは、今や死語で「被成人後見人」と言うそうです)となる場合もあるようで、そうそう物事巧くは行かない様ですのでお気を付けのほどを。

 まあ一番無難と思われるのは出張旅費を浮かす方法でしょう。特に外国出張の場合には実際の経費と支給される日当・宿泊費との差額が大きい場合があります。しかしこれとても、お偉方に随行をする出張の場合には超高級ホテルに一緒に宿泊せざるを得ず、持ち出しになることもありますし、我が家のように行く先々での家族からのお土産の要求が激しい場合には常に収支トントンか、むしろ赤字の場合が多いようです。

 この出張旅費を浮かすという方法は何も日本のご亭主族の専売特許ではありません。日本に研修などでやってくる開発途上国の人々の場合には深刻です。物価が故国と日、本では1桁以上も違うだけに、とてももったいなくて日本人のように日当をそのまま使うわけには行きません。弁当の代わりにゆで卵やパンを買って済ますなど、食事もそこそこに節約を重ねていて痛ましいほどです。こうして日本滞在中に貯めた日当の額は故国では1年分の給与に相当することも珍しくはないのです。

 まあ、へそくりの財源として一番オーソドックスなのは、原稿料や講演料でしょうが、これとてもご本人に余程の文才や、専門知識や学識が無ければ叶わないわけで、そう簡単ではありません。 ともかく世の亭主族のへそくり作戦の努力には実に涙ぐましいものがありますね。

甲斐 晶(エッセイスト)

|

« 薬草 | トップページ | アフリカ・ツメガエル »

生活」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 薬草 | トップページ | アフリカ・ツメガエル »