アフリカ・ツメガエル後日談
は虫類や両生類の中でカエルほど親しみ深いものはありません。現に、ある製薬会社のマスコットにまでなっていて、薬屋の店先に置かれた大きなカエルの人形を通りすがりの小学生が撫でて行くのを見かけたりします。これがヘビの人形だったりしたら、きっとこうはいかないことでしょう。
さすがにヒキガエルはグロテスク過ぎて、人気は今一つですが、ひょうきんな顔つきのアマガエルの方は愛橋があって、子供番組、セサミストリートでもカーミット・ザ・フロッグが人気キャラクターになっています。
世界中にカエルの愛好家が多いからでしょう、インターネット上にカエルのホームページ(http://netro.ajou.ac.kr/~lastfrog/frog/froggy.html )を作った研究者がいます。 カエル好きが昂じて付いたあだ名が“Froggy”とか。世界中の様々な種類のカエルの写真を始め、学術情報やカエルにまつわる話題、イラストなどを満載。指定の箇所をクリックすると、「ケロケロ」とカエルの鳴き声が聞こえてくるほどの懲りようです。ケロちゃんのお食事用に世界の昆虫食のレセピーまで用意されていて、愛蛙家(?)にとっては必見ものです。
さて、わが家で飼い始めたアフリカ・ツメガエルの「ぶち」については前回(アフリカ・ツメガエル)ご紹介しましたが、今回はその後日談です。
「ぶち」を飼い始めたのは残暑がまだ厳しかった8月下旬のこと。他に2匹が一緒だったのですが、アフリカ原産なのに暑さが苦手な性質のため、相次いで他界。「ぶち」1匹だけが生き残りました。餌の乾燥糸ミミズを良く食べ、みるみるうちに当初の4倍以上に大きくなって、筋骨隆々の体型に。のし泳ぎや「水中クンバカ」(何しろ息が長くて、10数分間も潜水したままなのです)を披露してくれ、見ていて飽きませんでした。
ところが飼い始めて3ヶ月後の11月頃から異変が始まりました。時折、手脚を真っ直ぐ伸ばした状態で痙攣を起こすのです。水槽の底で発作が起きると、脚が硬直したままですから、水面まで息継ぎに上がれません。そのまま窒息してしまうのではと見ていてハラバラ。冬場になり水温が低下したためではないかと判断し、熱帯魚用のヒーターを水槽に取り付けたところ、この発作は起こらなくなりました。
次なる異変は、視力が落ちて失明したのではと思わされるような行動パターンです。給餌の度に水槽の端を筈で叩いていたところ、これが条件反射となって、箸で叩く と餌を求めて水面まで上がって来るようになりました。しかし、水面に浮かんだ餌の乾燥糸ミミズが良く見えないのか、そのすぐそばでしきりに飛びつくのに、一向に口の中には収まりません。食べ終わるまでに随分体力を消耗するようになりました。
しかも折角このように苦労しながら餌を食べても、今度はしばしばこれを吐くようになったのです。そうなると、口から白っぽい粘液の雲をたなびかせながら泳ぐ始末。粘液で包まれた餌を引き上げてみると、中は未消化のまま。拒食症の蛙なんて聞いたことがありません。
どうもこれは不眠症が原因ではないかと思われるのです。都会の街路樹は夜でも昼間並みの照明のため不眠症の症状を呈していると言われています。わが家の「ぶち」の場合、体調を崩し始めた時期と息子が大学受験で猛スパートを掛け始めた時期とがほぼ一致します。受験生のこととて、夜と昼とを取り違えた生活。夜中でも煌々と明かりを点けた部屋に「ぶち」の水槽があったのです。
「ぶち」は次第に痩せ衰え、肌は艶を失い、あれほど逞しかった脚も見る影もなく、お腹は皺だらけ。刺激に対する反応も段々少なくなり、辛いのか、ただ水面に浮かぶばかり。ペットショップに相談すると、拒食症になると手遅れとの話。生き餌をやってみたらとのアドバイスで緋メダカを10匹水槽に放しました。2匹が瀕死状態で見つかり、4匹が行方不明。「ぶち」のお腹も久しぶりに膨らんでいたので、どうも食べたようです。
しかし結局は「薬石効無く」半年後に他界。水槽は排メダカの天下となってしまいました。 甲斐 晶(エッセイスト)
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